「平和の追求」というスローガンが空虚に見える。アラスカでの米ロ首脳会談後のプレスコンファレンスで握手する両首脳(8月15日、写真:AP/アフロ)

メディアは私が何をやってもケチをつける

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 予想されたことだが、大山鳴動鼠一匹だった。

 米国ドナルド・トランプ大統領とロシアのウラジーミル・プーチン大統領の対面首脳会議は、かつてロシア領だった米アラスカ州アンカレッジで行われた。

 結果は、予想していた通り、「プーチンの勝利」(ウォール・ストリート・ジャーナル)であり、「NYET YET=ニエット(まだまだ、という意味のスラング)」(ニューヨーク・ポスト)だった。

Putin Returns to Moscow With Air of Triumph After Summit - WSJ

Trump admin live updates: Putin meeting, National Guard in DC, more news)

(メディア王、ルパート・マードック氏傘下の保守系2新聞がここまで批判的に書くのだから他の主流紙は推して知るべし、だ)

 こうした報道に癇癪を起こしたトランプ氏は、自前のSNS「トゥルー・ソーシャル」にこう投稿した。

「フェイク・ニュース(トランプ氏は主要メディアを批判する際にこの言葉を多用する)とその相棒である過激派左翼の民主党は、真実を暴力的に歪めている」

「私が何か言い、何をしようと悪く書く」

「私は、(ジョー・)バイデン(当時大統領)の馬鹿げた戦争を巡って、アラスカで偉大な会談を行った。私が当時、大統領だったら起こることのない戦争についてだ」

「ところがやつら(主要メディア)は、私が(プーチン氏との会談で)ひどい過ちを犯したとほざいている。私がものすごく悪い取引をしたとなじっている」

「だから私は、やつらをフェイク・ニュースと呼ぶのだ」

 これに対してメディア、特にリベラル系は直ちに「まさに気に入らないことがあると泣き喚くよちよち歩きの子供のような醜態」(Politicususa)とコメントしている。

politicususa.com/p/trump-tantrums-and-blames-joe-biden

トランプの狙いは会談することだけ?

 だが、今回の首脳会談を目論んだトランプ氏の狙いは、ウクライナ戦争の停戦でも休戦でもなかったのではないか、といった見方が米国内には広がっている。

 米国民の最大の関心事は、強硬な不法移民取り締まり、関税外交のしわ寄せによる不況感、トランプ氏を含む要人の未成年買春疑惑絡みの「エプスタイン問題」など、トランプ批判につながる国内問題。

 ガザ紛争やウクライナ問題などには意外と関心が薄い。

 共和党と民主党との対立が激化する中で、ありとあらゆるアジェンダで国内世論の亀裂は深まる一方だ。

 施政者の常套手段とはいえ、トランプ氏がこうした国内問題から国民の目を外に逸らそうとしても不自然ではない。

 それが今回のアラスカでの首脳会談だとしたら、成果は必要なかったのかもしれない。