トランプ大統領はノーベル経済学賞に資すると話すピーター・ナバロ大統領首席戦略官兼上級顧問(7月10日ホワイトハウスで、写真:AP/アフロ)

関税一斉引き上げで重商主義まっしぐら

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 刑務所送りを大統領再選で阻止し、暗殺からも逃れた男は強い。

 自分を十字架にはりつけようとした者すべてに報復し、自分に不利な情報を出す者は告訴したり、官職から外す。気に食わない大学・研究機関には大統領権限で連邦政府予算をストップする・・・。

 ドナルド・トランプ米47代大統領の就任100日間の政治は報復と処罰に費やされた。

 その一方で「アメリカ・ファースト」の政治アジェンダは、「関税恐喝外交」で世界中を震え上がらせている。

 同盟国、敵対国の区別なく、対米貿易黒字国に対しては高額な関税を吹っ掛け、最終的には対米投資、武器売り込みを勝ち取ってきた。

 日本も例外ではなかった。

「トランプの米国」は8月7日、各国への関税を一斉に引き上げる。

 Mercantilism(重商主義)に転じた超大国は経済ルールを一方的に書き換え、戦後80年間続いてきた自由貿易体制は崩れた。

 まさに歴史に残る大統領になったかに見える。

「エプスタイン問題」は時限爆弾

 しかし、対外的には順風満帆に見えるトランプ氏も国内では時限爆弾を抱えている。

 過去に少女買春に関わっていたのではないかという疑惑がつきまとって離れないからだ。

 旧友だった買春仲介人、ジェフリー・エプスタイン元被告(拘留中に自殺)の保管していた未成年者買春顧客リストに、トランプ氏の名前があったのか。

 そのカギを握るエプスタイン元被告の恋人でパートナーだったギレーヌ・マックスウエル受刑者(禁固20年)にメディアの関心が集まるや、トランプ氏はトッド・ブランチ司法副長官(トランプ氏の元顧問弁護士)をフロリダ州タラハーシの刑務所に派遣した。

 そして、3日間にわたり同受刑者を尋問させた。

 この尋問の後、同受刑者はテキサス州ブライアンの刑務所に移送された。

 同刑務所は女性専用で窃盗、詐欺など非暴力犯罪や横領、収賄などのホワイトカラー犯罪での受刑者が収監されている。監視体制も緩やかである。

Ghislaine Maxwell moved to federal prison camp in Texas

 専門家は、トランプ氏が取れる選択肢は①エプスタイン元被告に対する大陪審での捜査資料の開示、②減刑をちらつかせながらマックスウエル受刑者から新たな情報を入手する ――しかないと見ている。

Trump’s Bad-to-Worse Options on Epstein - POLITICO

 米国民の60%がトランプ政権の「エプスタイン問題」の取り扱いには不満を持っている。トランプ氏の支持基盤である「MAGA」(米国第一主義運動)の一部にすら不満がくすぶっている。

 保守系経済紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が「トランプ氏からエプスタイン元被告への手紙の存在」をスクープしている。

 WSJのオーナーであるメディア王、ルパート・マードック氏が許可したことは間違いない。

 トランプ氏は直ちに提訴した。長期戦になることは必至だ。