石破首相の続投には二つの壁が立ちふさがっている(写真:ロイター/アフロ)
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(宮前 耕也:SMBC日興証券 日本担当シニアエコノミスト)

※本稿は7月24日午前9時までに得られた情報を基に執筆しています

<退陣観測報道が出るも、石破首相は否定>
 7月23日は慌ただしい一日となった。朝には米国トランプ大統領がSNSで日本との関税交渉の暫定的な合意を報告。石破首相が麻生元首相、菅元首相、岸田前首相と会談する予定と伝わったほか、首相の退陣観測も相次いだ。

 読売新聞は「月内にも」、毎日新聞は「8月末までに」退陣を表明、産経新聞は「8月下旬にも」進退を明らかにすると報じた。だが、午後の歴代首相との会談後、石破首相は「出処進退は一切話していない」と説明。退陣報道を否定した。

 英フィナンシャル・タイムズ(FT)紙は日本の40年債入札の記事において、退陣時期を巡って矛盾する観測記事が出た後、石破首相は退陣自体を否定したと政局の混乱ぶりを紹介している。

 7月24日の各紙朝刊をみる限り、歴代首相との会談では(当然といえば当然だが)出処進退の話が出たようだ。石破首相は続投への理解を得ようとしたが、濃淡の差こそあれ容認されるに至らなかった模様だ。

 なお、読売新聞は7月24日付け朝刊で石破首相が退陣の「意向を固めた」と報じ、焦点が「ポスト石破」に移行すると位置づけたが、同日時点で他紙はそこまで踏み込んでいない。

 自民党内において石破首相続投への反発が広がっており、かつ国会運営で協力を求めるべき主要野党も続投を批判している状況下では、いずれ退陣に至る可能性は高いだろう。ただ、7月23日までの発言をみる限り、石破首相自身は続投を諦めていないようにもみえる。

 自ら辞意を示すのか、自民党内の「石破おろし」で退陣を余儀なくされるのか、野党が内閣不信任案を提出するのか、そしてナローパスだが続投が可能となる環境に至るのか、現時点ではさまざまなシナリオに備える必要がある。退陣に至るとしても、その経路やタイミング次第で、政権の枠組みが変わってくる可能性がある。

 7月16日付けの拙稿「参院選『与党過半数』は実現可能か、フローチャートで考える参院選後の政権枠組み全シナリオ」において、与党が敗北しても石破首相が続投する可能性があると指摘した。本稿では、参院選後の情勢や政治日程を踏まえて、今後の展開を再考する。

 石破首相が続投を望んでも、政権継続には2つの大きな関門がある。1つ目は自民党内における「石破おろし」の動き、2つ目は野党による内閣不信任決議案の提出だ。