大きな看板を備えたビル(パリで、Pixabayからの画像)
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 AIの急速な進化が、広告業界の根幹を揺るがしている。

 コンテンツ制作からキャンペーン最適化まで、あらゆる業務プロセスがAIによって再定義され、業界は「巨大な変革」の渦中にある。

 広告大手のトップは、AIがもたらす「破壊的」な影響に強い危機感を表明する一方、新たなビジネスチャンスへの期待も示す。

 しかし、消費者の間にはAIに対する懐疑的な見方も根強く、業界は難しい舵取りを迫られている。

「投資家も不安」、WPPのCEOが語る危機感

「AIによるディスラプション(大変革)は、あらゆる業界の投資家を不安にさせており、我々のビジネスを完全に破壊している」

 広告世界最大手の英WPPのCEO(最高経営責任者)を退任するマーク・リード氏は、AIがもたらす衝撃の大きさを率直に語った。

 米CNBCの報道によれば、同氏が指摘する脅威の中核にあるのは、米オープンAIの「DALL-E(ダリ)」や米グーグルの「Veo(ベオ)」に代表される生成AIだ。

 これらのツールは、画像や動画といった広告コンテンツを驚異的なスピードで作り出すことができ、従来の制作プロセスを根底から覆す力を持つ。

 リード氏によれば、AIの影響はコンテンツ制作にとどまらない。

「最高の弁護士、最高の会計士、そして最高の広告クリエイターやマーケターも、多くはAIを基盤として業務を行うことになる」と述べ、専門知識が、AIによって広く一般に開放され、極めて低コストで利用可能になる未来を予測する。

 この変革は、もはや未来の話ではない。

 WPPでは既に、独自のAI搭載マーケティングプラットフォーム「WPP Open」を5万人の従業員が活用しているという。

 リード氏はこれを自らの「レガシー(遺産)」だと語り、企業はブリーフィング資料の作成からメディアプランニング、キャンペーンの最適化に至るまで、AIの影響を積極的に「受け入れる」必要があると強調した。