エージェント型AIへの期待は大きいが・・・(Pixabayからの画像)
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 米調査会社のガートナーはこのほど、自律的にタスクを遂行する次世代技術「エージェント型AI」について、現在進行中のプロジェクトの4割以上が数年後に中止に追い込まれるとの予測を発表した。

 コストの増大やビジネス価値の不明確さが主因。市場の過剰な期待が先行し、実態の伴わない宣伝が横行している現状に警鐘を鳴らす。

 一方、同技術が正しく活用されれば、企業の意思決定や業務プロセスを根底から変える大きな可能性を秘めているとも分析。企業には、流行に流されない戦略的な視点が求められる。

現状と課題:過熱する期待とリスク

 このリポートによると、自ら目標を設定し、計画を立てて自律的に行動するエージェント型AIのプロジェクトは、その多くが初期段階のリスクを抱えている。

 リポートでは、現在進行中のプロジェクトの40%以上が、2027年末までに「コストの増大」「ビジネス価値の不明確さ」「不十分なリスク管理」といった理由で中止されるとしている。

 背景には、IT(情報技術)業界に蔓延する過剰な期待、いわゆる「hype(ハイプ)」がある。

 ガートナーのシニア ディレクター アナリスト、アヌシュリー・ヴァーマ氏は「現在のプロジェクトのほとんどは初期の実験段階にあり、ハイプに牽引されて、しばしば技術が誤って適用されている」と指摘する。

 特に問題視されているのが「agent washing (エージェント・ウォッシング)」と呼ばれる現象だ。

 これは、既存のAIアシスタントやチャットボットといった製品を、実質的なエージェント能力を持たないままエージェント型AIと称して再ブランド化する動きを指す。

 ガートナーは、市場に存在する数千社のベンダーのうち、本物のエージェント型AI技術を持つ企業はわずか130社程度にとどまると推定しており、多くの企業がエージェント型AIとしての実態のない製品に投資してしまうリスクに直面している。

企業の狙いと動向:コスト最適化と生産性向上への投資

 こうした課題にもかかわらず、大手IT企業はエージェント型AIへの投資を加速させている。

 米セールスフォースや米オラクルといった巨大企業は、この技術が将来的に利益率の向上やコストの最適化に繋がると見て、既に数十億ドル規模の資金を投じている。

 その狙いは、単純な定型業務の自動化(RPA)や、対話に応じるだけのチャットボットの能力を超え、より複雑で非定型な業務プロセス全体をAIに委ねることにある。

 これにより、人間の介入を最小限に抑え、企業の生産性を飛躍的に向上させることが期待されている。