TSMCの高雄工場(6月7日撮影、写真:ロイター/アフロ)

 台湾当局は6月中旬、中国の通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)と中国半導体ファウンドリー(受託製造)最大手の中芯国際集成電路製造(SMIC)を、事実上の禁輸対象となる輸出管理リストに追加した。

 米国の対中半導体規制と歩調を合わせ、安全保障上の重要技術が中国へ流出することを防ぐ狙いがある。

 米中の技術覇権争いの最前線に立つ台湾が、その姿勢をより鮮明にした形だ。

狙いは米国との連携強化、「抜け穴」封じ

 台湾経済部(経済省)国際貿易署は、ファーウェイ、SMICおよびその多くの子会社を「戦略性高科技貨品エンティティリスト」に加えた。

 これにより、台湾企業がこれらの企業にリスト掲載品目を輸出する際には、当局の許可が必要となる。英ロイター通信によれば、この措置は「米国の政策との連携をさらに深めるもの」とみられている。

 国際貿易署は、今回のリスト追加の理由について、対象企業が「武器拡散活動に関与している、または安全保障上の懸念があるため」と説明している。

 独立系アナリストの王瑞(レイ・ワン)氏は米CNBCの取材に応じ、今回の措置の真の狙いは、既存の規制における抜け穴を塞ぎ、実効性を強化することにあると指摘した。

 半導体ファウンドリー世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)のような企業は既に米国の輸出規制を順守している。

 その上で王氏は、域内法での明文化により、違反した場合の罰則が強化される可能性も示唆した。

背景に「ファーウェイに流出したTSMC製チップ」

 この動きの背景には、2024年10月に発覚した問題がある。

 米国の制裁下にあるファーウェイ製のAIトレーニングカード(AIの学習を高速化するための拡張カード)から、TSMCが製造した先端半導体が見つかったのだ。

 香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)は、この一件が米当局による監視強化と、台湾への圧力につながったと報じている

 ファーウェイは米国の厳しい規制下で、米エヌビディア(NVIDIA)の製品に代わる独自のAI半導体の開発を進めている。

 米コンサルティング会社、DGA-オルブライト・ストーンブリッジ・グループのポール・トリオロ氏はCNBCに対し、ファーウェイが規制の抜け穴を利用して、TSMCから数百万個規模のGPU(画像処理半導体)ダイ(半導体の基盤となる小片)をAIチップ用に確保したとの見方を示した。

 同氏は、今回の措置がこうした動きを封じ込める狙いがあると分析している。