アレクサ・プラスを発表する米アマゾンのパノス・パネイ氏(2月26日、写真:UPI/アフロ)
米アマゾン・ドット・コムは、10年にわたり進化が停滞し、巨額の赤字事業と化していた音声アシスタント「Alexa(アレクサ)」の抜本的な事業再建に乗り出した。
陣頭指揮を執るのは、元米マイクロソフト製品開発責任者のパノス・パネイ氏。
同氏の指揮の下、今夏にも生成AIを搭載した有料版「Alexa+(アレクサ・プラス)」の本格展開を始め、長年の課題である収益化の実現を目指す。
10年の停滞、AIで再起へ お荷物事業からの脱却
2014年に登場したAlexaは、当初、未来のIT(情報技術)インターフェースとして脚光を浴びた。
しかし、その後の進化は限定的で、ユーザーの用途は天気予報の確認やタイマー設定といった単純な機能にとどまっていた。
アマゾンは、赤字覚悟でスマートスピーカー「Echo(エコー)」を安価に販売し、自社のEC(電子商取引)サイトでの消費を促す戦略を描いたが、この事業モデルは機能せず、デバイス部門は年間数十億ドル(数千億円)規模の赤字を出す、お荷物事業となっていた。
この苦境を打開するために白羽の矢が立ったのが、2023年10月にアマゾンに移籍したパノス・パネイ氏だ。
同氏はマイクロソフトで、スタイリッシュなパソコン「Surface」シリーズやOS「Windows 11」を成功に導いた立役者として知られる。
製品の品質と洗練されたデザインに徹底的にこだわる同氏の手腕に、アマゾンは事業の再建を託した。
パネイ氏が進める再建策の中核が、次世代アシスタントのAlexa+である。これは大規模言語モデル(LLM)を全面的に採用し、より人間らしく自然な会話を実現する。
例えば、複数の指示を一度に受け入れたり、ユーザーの過去の利用履歴から好みを先読みして提案したりするといった、従来のAlexaには不可能だった高度な対話機能を提供する。