
米国の対中半導体輸出規制が強化される中、中国のテクノロジー大手、騰訊控股(テンセント)と百度(バイドゥ)が、AI開発競争で生き残るための具体的な対応策を進めている。
米経済ニュース局のCNBCよれば、この2社は①高性能AIチップの備蓄、②AI処理の効率化、③国産半導体の活用、の3つのアプローチで難局を乗り越えようとしている。
テンセント、「十分な在庫」でモデル訓練継続
中国最大のメッセージングアプリ「微信(ウィーチャット)」を運営するテンセントの劉熾平(ラウ・マーティン)総裁(プレジデント)は2025年5月下旬の決算説明会で、同社が購入済みのGPU(画像処理半導体)について、「かなりの量の備蓄」があると明かした。
同氏は、GPUクラスターの規模拡大に頼らずとも、より小規模なチップ群で良好な訓練結果を達成できるとし、「既存の高性能チップ在庫で、今後数世代のモデル訓練を継続できる見込みだ」と自信を示した。
AIタスクを実行する推論(inferencing)処理においては、「ソフトウエアの最適化」によって効率を高め、少ないGPUで処理能力を維持する方針だ。
さらに、計算能力の要求が低い小規模モデルの開発や、カスタム設計チップ、中国国内で入手可能な半導体の活用も視野に入れているという。
劉氏は「GPUを力任せに購入するのではなく、ソフトウエア側で解決策を模索する」と述べ、工夫による効率改善の意義を強調した。この戦略により、AI開発とサービスの継続的な提供を目指す。
バイドゥ:「フルスタック」能力と国産チップに期待
中国検索最大手のバイドゥは、自社のクラウドインフラ、AIモデル、そして対話型AI「文心一言(アーニーボット)」などのアプリケーションを統合した「フルスタック」の強みを前面に押し出す。
同社クラウドサービス事業群総裁である瀋抖(シェン・ドウ)氏は、「最先端チップへのアクセスがなくても、当社独自のフルスタックAI能力により、強力なアプリケーションを構築し、意義のある価値を提供できる」と語った。
バイドゥもソフトウエア最適化によるモデル運用コストの削減や、保有GPUの効率的な利用を進めている。
瀋氏はまた、中国国内企業によるAI半導体開発の進展に期待感を示し、「国内で開発された自給可能なチップは、効率化する国産ソフトウエアスタックと共に、中国のAIエコシステム(経済圏)における長期的なイノベーションの基盤を構築する」と展望を述べた。
こうして、テンセントとバイドゥはともに、中国国内で開発される半導体技術への期待を表明した。
米調査会社ガートナーのアナリスト、ガウラブ・グプタ氏は「中国は材料から装置、チップ、パッケージングに至るまで、独自の国内半導体エコシステムを築いている」と指摘。
米国製には及ばないものの、国産AIチップが調達ルートの一つになっているとの見方を示した。