
約3週間前の5月23日(米国時間)、ドナルド・トランプ米大統領が米アップルのスマートフォン「iPhone」などの海外生産品に対し25%の関税を課す可能性を示唆し、大きな波紋を広げた。
この動きは、米国の保護主義的な通商政策が再び強化される可能性を示しており、米中貿易摩擦とサプライチェーン(供給網)再編の渦中にあるアップルにとって、新たな、そして深刻な試練となっている。
ティム・クックCEO(最高経営責任者)は、関税問題に加え、AI開発の遅れや各方面からの規制圧力など、多岐にわたる経営課題に直面しており、その先行きには不透明感が漂う。
トランプ氏、関税カード再び 米国第一主義鮮明に
トランプ大統領は、ティム・クックCEOに対し「iPhoneを米国内で製造・組立することを期待する」と述べ、応じない場合は少なくとも25%の関税を課す考えを示した。
この関税は韓国サムスン電子など海外メーカーのスマホも対象になるとし、6月下旬の導入を示唆した。
また、欧州連合(EU)に対しても、貿易不均衡を問題視し、強硬姿勢を崩さない考えを示している。
背景には、トランプ氏の持論である「米国第一主義」と、国内製造業の雇用創出への強い意欲がある。
同氏は、アップルが中国など海外に製造拠点を置いていることを長年問題視してきた。
スコット・ベッセント財務長官も、アップルに対し、半導体の米国内生産を促すなど、政権全体で国内回帰への圧力を強めている。
米中間の貿易摩擦は依然としてくすぶり続けている。
2025年5月12日の米中会談で追加関税の一部引き下げ合意(90日間限定で対中関税30%)に至ったものの、予断を許さない状況だ。
こうした中で打ち出された新たなスマホ関税は、米国を代表するグローバル企業であるアップルを主要なターゲットとするものであり、トランプ政権の強硬な姿勢をあらためて浮き彫りにした。