AIの導入で配達作業の画期的効率化は実現できるか(写真は米ニューヨークのマンハッタンで、2021年11月29日、写真:ロイター/アフロ)
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 米アマゾン・ドット・コムは6月上旬、AI技術の導入において新たな段階に入ると発表した。

 自律的に複雑なタスクを処理できる「エージェンティックAI(agentic AI)」を中核技術と位置づけ、研究開発部門内に専門グループを新設。

 倉庫作業の本格的な自動化や配送ルートの最適化を通じて、物流業務の効率化と顧客サービス向上、環境負荷の低減を目指す。

狙いと効果:迅速な配送と環境配慮、労働環境改善も視野

 アマゾンがAI活用の対象とするのは、商品の保管から顧客への配送に至る物流の全工程だ。最大の狙いは、AIによる効率化を通じた「より迅速な配送」の実現にある。

 同時に、商品在庫の最適化や配送ルートの効率化により、廃棄物の削減や輸送に伴う温暖化ガス排出の抑制といった環境負荷低減効果も見込む。

 米シリコンバレーにあるハードウエア研究開発部門「Lab126」でロボット開発を率いるイェシュ・ダッタトレヤ氏は、「AI搭載ロボットは、特に休日などの繁忙期に、狭い場所での重量物運搬などで極めて重要な役割を果たす」と述べ、作業負担の軽減にもつながる可能性を示唆した。

取り組み詳細1:倉庫作業を変革する「エージェンティックAIロボット」

 米CNBCによれば、アマゾンのデバイス開発を担ってきたLab126に新設されたのは、エージェンティックAIに特化したチームだ。

 このチームは、ロボットが複数のタスクを自律的に実行するためのエージェンティックAI「フレームワーク」開発を推進する。

 アマゾンによると、この技術を搭載した次世代の倉庫ロボットは、従来の単一作業しかこなせないロボットとは一線を画す。

 例えば、人間の指示に基づき、トレーラーからの荷降ろし作業を行った後、必要に応じて修理部品を取りに行くといった、複数のステップから成る複雑な作業を自律的に実行できるようになるという。

 これにより、倉庫ロボットは「柔軟で多才なアシスタント」へと進化すると同社は説明する。

 ただし、ダッタトレヤ氏によれば、これらの新型ロボットの具体的な外観や配備数、導入時期については未定だ。

 エージェンティックAIは、ユーザーの指示や状況を理解し、目標達成のために自律的に計画を立てて複数のアクションを実行する能力を持つAIを指す。チャットボットのような対話応答にとどまらない点が特徴だ。

 特にロボットのような物理的なシステムに応用される場合は「フィジカルAI」とも呼ばれ、近年注目される技術分野だ。