アマゾン・プライムの配送トラック(2024年4月5日撮影、写真:AP/アフロ)
米インターネット通販最大手アマゾン・ドット・コムは6月下旬、新たな配送サービス拡大計画を発表した。
Prime(プライム)会員向けの「当日・翌日配送」を、これまで手薄だった米国の地方や小規模な都市へ広げる。2025年末までに、新たに4000カ所以上が対象となる。
同社はAIによる需要予測や物流拠点の強化のため、2026年末までに40億ドル(約5800億円)以上を投資。都市部と同水準の利便性を提供し、顧客体験の向上を図る。
急成長する日用品の販売を強化し、地方に広範な店舗網を持つ小売大手米ウォルマートなどに対抗する狙いがある。
生活インフラ化目指す
この新戦略の目的は、これまで迅速な配送サービスの恩恵を受けにくかった地方住民の不便を解消することにある。
同社のワールドワイド・ストア部門のダグ・ヘリントンCEO(最高経営責任者)は「アイオワ州の小さな町でもロサンゼルスの中心部でも、誰もが同じ素晴らしい顧客体験を得られるようにする」と述べ、サービス格差是正の意義を強調した。
これにより、実店舗が遠くにしかない地方の消費者は、食料品や家庭用品といった日用品を、注文後数時間で受け取れるようになる。
これは買い物にかかる時間とコストの節約に直結する。
背景には、アマゾンにとって日用品が新たな成長の柱になっていることがある。
米CNBCによると、同社の食料品や家庭用品カテゴリーは巨大ビジネスに成長している。
傘下の食品スーパー「ホールフーズ・マーケット」などを除いても、年間売上高は1000億ドルを超える規模だ。
2025年第1四半期には、他の全カテゴリーの2倍以上の成長率を記録した。紙タオルやおむつ、ドッグフードといった「すぐ欲しい」商品の迅速な配送が、顧客の利用頻度を高める鍵となっている。
競合の「逆」を行く大規模投資
今回の計画の基盤となるのは、アマゾンが4月に発表した地方配送網への大規模投資だ。
他の物流事業者が採算性を理由に地方サービスから撤退する動きを見せる中、アマゾンは「逆張り」とも言える戦略で投資を強化。
2026年末までに地方向け配送ネットワークの規模を現在の3倍に拡大し、10万人以上の新規雇用・業務機会を創出するとしている。
この投資により、アマゾンはラストマイル(最終拠点から顧客への配送)を担う多様なパートナーシップを活用する。
中小企業が配送を請け負う「デリバリー・サービス・パートナー(DSP)」や、個人事業主が自身の車両で配達する「Amazon Flex(Amazonフレックス)」、地域の小規模店舗が配達拠点となる「Hub Delivery(ハブ・デリバリー)」などを組み合わせ、きめ細かな配送網を構築する。