「絵画入門 よくわかる神仏と人物のフシギ」展示風景。国宝 因陀羅筆・楚石梵琦題詩《禅機図断簡 智常禅師図》元時代(14世紀) 前期展示
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(ライター、構成作家:川岸 徹)

美術のなかの神様、仏様、そして人の姿に注目する絵画の入門展。夏休みシーズンに、子どもと一緒に楽しめる展覧会「絵画入門 よくわかる神仏と人物のフシギ」が静嘉堂@丸の内で開幕した。

研究色豊かな企画展が魅力

 静嘉堂文庫美術館の展示ギャラリーが世田谷区岡本から丸の内に移転して、まもなく3年が経とうとしている。開館当初は、美術館としては決して広いとはいえないスペースに「来館者は物足りなさを感じるのではないか」と感じたし、庭園に囲まれ、どこかのどかなムードの岡本時代が懐かしく思い出されもした。

 だが、丸の内に移った静嘉堂文庫美術館「静嘉堂@丸の内」は展示内容が替わるたびに訪れたくなる、大好きな一館になった。アクセスが便利、都心の美術館にしては入館料が手頃に設定されているといった理由もあるが、何より研究色豊かな企画展に、毎回、「よく作り上げた」と驚かされる。

 その象徴といえるのが、前回の展覧会「黒の奇跡・曜変天目の秘密」だ。静嘉堂を代表するコレクション《曜変天目》をテーマに、中国と日本の黒いやきものの歴史をたどりつつ、最新の研究成果を発表するという内容。《曜変天目》についてのパネル解説は、新たな発見がふんだんに盛り込まれていて、心がわくわくと躍らされた。口コミで評判が広まり、静嘉堂も「予想以上の来場者数を記録した」という。

 そのヒットを受けて、次なる企画展「絵画入門 よくわかる神仏と人物のフシギ」が開幕した。今回は会期中に夏休み期間を挟むことから、「親子で楽しんでほしい」とファミリー層を強く意識した内容。さて、子どもも対象に静嘉堂@丸の内はどんな展覧会を作り上げたのか。