警察官の不祥事に関する報道が増えている(写真:akiyoko74/イメージマート)
警察官による不祥事が相次いで報告されている。今年2月、新宿警察署の巡査部長(43)が職務で病院を訪れた際に、患者の持ち物から現金16万円を盗んだ疑いで書類送検された。3月には、蒲田警察署の巡査部長(45)が捜査で入ったアパートで現金3000万円を盗み逮捕された。
5月には、高尾警察署の巡査(32)が、交番に相談に来た女性宅で現金2万円を盗んだ疑いで書類送検された。同じく5月、警視庁捜査一課の警部(51)がこれまでに10件以上も火災現場で窃盗した疑いがあるとして逮捕された。
なぜこれほど警察官による犯行が多発するのか。警察官の質は劣化しているのか。警視庁捜査一課殺人犯捜査第一係・元警部補の佐藤誠氏に聞いた。(聞き手:長野光、ビデオジャーナリスト)
──今年になって警察官の不祥事が相次いで明るみに出ています。
佐藤誠氏(以下、佐藤):報道された事件を見ると、火事の現場、体調を崩された方や高齢者など、いずれも被害者が社会的弱者です。公権力を使って弱さに付け込んだ犯行だという点が最も許せません。社会の信頼を根幹から失う行為で、危機感を覚えます。
実は、警察官による事件現場での窃盗は昔からありました。警察官は、事件があると、住民など中の人を出して自分だけ現場に入ることができます。だから、盗もうと思えば何でも盗むことができるんです。
棚の上にもらった香典などを置いている家もあれば、引き出しの中にしまっていることもある。そういう金品を火事の現場などから持ち出しても誰にも分かりません。
かつて私が職務で亡くなったある高齢女性の家に入った時、その女性はなんと腹巻きにポケットを作って、およそ700万円分の札束を入れたまま亡くなっていました。銀行に下ろしにいくのが面倒だから、肌身離さずお金を身に付けていたのでしょう。
高齢者は、特に銀行に行くことが億劫になる人もいるので、家の中に大金を置いていたり、身に付けていたりする場合が少なくありません。亡くなった方の自宅に何百万円も置いてある場面をいくつも見ました。警察官をやっていれば、そういう場面には幾度も出くわしますよ。
数人で現場に入っても、「向こう調べてきて」なんて言いながら1人になり、見つけたものをポケットに入れるなんていくらでも可能です。緊急の場合は、警察官が関係者から所持品を一時的に預かる場合もある。そういう時に抜くということもあり得ます。捕まった警察官たちも、今回が本当に初めての犯行かは疑わしいと思います。
──今回の事件を起こした警察官たちは、巡査、巡査部長、捜査一課の警部です。立場から見てベテランですか?