
6月26日以降、日本経済新聞が、独自取材によって米国に合成麻薬「フェンタニル」を不正輸出する中国組織が日本に拠点を作っていた疑いが判明した、との報道を配信しています。
「フェンタニル」は、「ヘロイン」の約50倍、「モルヒネ」の約100倍強い効力を持ち、その蔓延が深刻な社会的影響を広げている「合成麻薬」である、とされるもの。
2016年には米国の歌手プリンス(享年57)も、フェンタニルを誤って過剰摂取したことで命を落としています。
米国内には200万人を超えるフェンタニル中毒患者が存在すると見られ、2021年には麻薬中毒死者11万人のうちフェンタニル単体で7割を超えたと報じられました。
日経の取材は、大量の公開情報に埋もれた足跡を丹念に追ったもので、データマイニングの専門家ではないであろう記者の綿密な、あるいは執念、と言っていいかもしれません。
ノンフィクション、ジャーナリズムの観点から、高く評価すべきものと思います。
また同時に、「フェンタニル」とは本当は何なのか、なぜヘロインの約50倍も強いのか、分子そのものに起因する機序や、クロス解析で明らかになる要因などは、裁判資料からだけでは分かりません。
そこで、今回は日本国内での蔓延予防を念頭に、物質科学に関わる大学人として、有効なサプリメントを準備しました。
日経が「米中新アヘン戦争」と呼ぶ暗闘で焦点となる物質、合成麻薬「フェンタニル」とは、いったい何なのでしょうか?
名古屋が結ぶ中国・メキシコ・米国
日経の取材によれば、2023年の5月から6月にかけて、米捜査当局は中国・武漢の化学品メーカー「Hubei Amarvel Biotech(湖北精奥生物科技)」の幹部数人を、違法に「フェンタニル」の原料となる物質を米国に持ち込んだとして逮捕しました。
最終的に彼らは裁判で有罪判決を受けますが、審理の過程でHubei Amarvel Biotech社には、日本のボス「Fengzhi Xia」なる人物が存在することが判明します。
「日本経済新聞は計100本を超す同社の裁判資料を調べ、膨大な文書の中から「日本のボス」は「Xia(「夏」)」という人物である可能性」を確認、「夏」は武漢で「富仕凱貿易(英名FIRSKY)」という企業に100%出資しており、FIRSKY社が日本でも法人登記していることを突き止めました。
代表者は「夏」氏、2021年6月に沖縄県那覇市で設立され、現在は名古屋市西区が本店所在地になっている。
そしてこの「名古屋」を結節点として、米中とメキシコを結ぶ、合成麻薬原料の物流ルートが機能していた可能性が垣間見えて来た・・・というのが既報の概略です。
犯罪捜査については続報を待つとして、以下ではこの薬品の物性や生体に対する効果などを確認してみましょう。