高い即効性を持つ麻酔薬
まず第一に強調しておきたいのは「フェンタニル」は極めて有用な「麻酔薬」として、医療現場で大活躍している物質であるという点です。
医薬品流通情報の観点から、まずここを押さえておきます。
法律で禁止されるのは、医用目的以外での濫用やそれを目的とする違法薬物の製造、原料の輸出入などであって、物質そのものには高い有効性があります。
フェンタニルは、微量でも即効性のある「鎮痛剤」「麻酔剤」として随所で活用されています。
端的にはガン患者のペイン・クリニック、手術中・手術後の疼痛管理として、モルヒネよりも効果的な使用が可能とされます。
また呼吸困難の緩和にも有効であることから、緩和ケアでの息切れ(呼吸困難)に対しても用いられます。ただし、副作用として呼吸抑制が起きることがあるとされています。
実は、本件も含めて議論を共有していただいている大学の研究チームメンバーに、かつて麻酔科医だった経験をお持ちの先生がおられ、貴重な直接の経験をうかがうことができました。
フェンタニルは「極めて厳重に金庫で施錠管理され」、「1箱から何アンプル取り出すかまで事細かに記録」しているそうです。
「したがって、手術後にフェンタニルの数が合わないとなると、医師や看護師が総出で探すような、厳しい管理の薬物」とのこと。
ただ、「鎮痛効果は非常に強く」、「さらに切れもよく」、「手術後の疼痛管理には重宝した」とのことでした。
手術以外でも、例えば産婦人科では産科麻酔として幅広く用いられ、分娩時の妊婦の痛みを和らげているとのこと。
とりわけ、帝王切開に際しては、脊椎クモ膜下麻酔などで極めて重要な役割をフェンタニルは担っているそうです。
ただし、母体への高用量使用で胎児に薬剤が作用すると、出生後の赤ちゃんの呼吸困難などを引き起こすリスクもあり、やはり慎重な管理が必要不可欠とのことでした。
さらに特殊な用途として、作用の発現時間が5~10分と即効性があるので、野戦病院で傷病兵への鎮痛にも頻繁に用いられているとのこと。
また、作用持続時間が1~2時間と比較的短時間であるため、他の麻酔薬などと組み合わせて最も広く用いられる、人類にとって有効な物質でもあるそうです。
これを最初に記しておきましょう。用法用量を守れば、実に優れた医薬品なのです。
さてしかし、どうしてそんなに「即効性」があるのでしょう?