画像は東大病院とは関係がありません(Sasin TipchaiによるPixabayからの画像)
11月19日、東京大学医学部付属病院の整形外科医師で医学部准教授でもある男性(53)が「収賄」容疑で逮捕されました。
ただちに大学当局、東大病院、また24日には東大総長である藤井輝夫氏名義での謝罪告知などが出されています。
本件について、私が非常に残念に思う点の一つは、逮捕の一報があった後、大手メディア各社が発信する「解説」類のピントの外れ方です。
「収賄」の事実があったのであれば、当該教員は厳密に処分され、再発防止の取り組みがなされる必要があるのは言うまでもありません。
しかし、例えば毎日新聞の社説など、奨学寄附金制度自体が悪の温床だというような論説には相当な違和感を感じざるを得ません。
事実検証に基づいて論説してほしいと願うばかりです。こういう社説が世論を形成してしまうと、次代を担うべき若手研究者・教員諸君に大いにマイナス効果が働いてしまう気がします。
そこで、この問題の本質がどこにあるのか、改めるべき点はどこか、といった再発防止の処方箋を一点の曇りなく示してみたいと思います。
奨学寄附金システムに不透明さはない
何が誤解を創り出しているのか。具体的に指摘してみます。
例えば「不透明な寄付金は、医療への信頼を揺るがしかねない。チェック体制を見直す必要がある」などと書く記事がありました。
しかし、奨学寄附金の制度自体には不透明な点はありません。
東大に限らず国立大学法人の出納は、寄付金にしても厳密な審査が行われ、またその経理は「会計検査院」の厳密なチェックに耐えるよう極めて詳細、入念に行われています。
ここには不透明な点はないことを強調しておきます。
「研究者が自由に使えるため、企業との癒着の温床になると指摘されてきた」というメディアの記述がありますが、どのようなケーススタディを念頭に置いて、癒着の温床になっていると指摘されているのでしょうか。
研究者が自由に使えるため、つまり研究者の出納の裁量が大きいがゆえに「企業との癒着の温床になる」という意味だとすれば、ここでいう「自由」の意味を理解していないのだと思われます。
このような文章が出てくるのは、おそらく2021年に三重大学で発生した便宜供与事案があってのことでしょう。