研究予算は血の一滴

 健全化さえ行われれば、奨学寄附金自体はガラス張りの極みのような出納ですから、こうした問題の再発は防止できるはずです。

 私は理学系物理学科の出身で、親研究室界隈では「湯川(秀樹)さんのノーベル賞賞金をいくつかに分けて、一部は京都大学に基研を作り、一部は南部(陽一郎)さんなんかのシカゴへの留学資金に充て・・・」といった昔話を聞かされて育ちました。

「研究予算は血の一滴」。極力節約して適切に執行しろと、嫌というほど強調されてきましたので、今年に入ってから立て続けに報じられる医学部の不祥事など、同じ大学の出来事とはにわかに思えません。

 悪いのは、基本的なコンプライアンスをわきまえなかった医師の教員であり、また「便宜供与」と分かったうえで「奨学寄附金」を入れた業者側にも責任があります。

 そこに、大学の経理システムを変に混ぜ込んで、何が悪いのか正体不明にするべきではありません。

 利益相反が生じるようなケースは、事務方レベルでストップをかけ、今後は二度とこうした愚かな事犯が繰り返されないよう、大学のガバナンスが問われているというべきでしょう。

 この点、日本経済新聞の社説は正鵠を射る主張を記しており、広く大学関係者にも一読を勧めたいと思いました。

 最後に、奨学寄附金の一部を大学がピンハネして残りを研究者や研究室に分配しているかのような大手メディアの記述もありましたが、記者の勉強不足ではないかと思われます。

 今まで書いてきたように、奨学寄附金に限らず、国立大学法人は会計検査院ルールでの厳密な経理出納を求められます。

 そのため公務員専従・短時間雇用職員の双方、かなりの人数の事務職員がチェックにあたり、透明性の高い出納が実施されています。

 大学が一定のオーバーヘッドを押さえるのは、出納管理にも人件費、諸経費がかかるから当たり前のことです。