イーロン・マスク氏がヒトラーに似たポーズをとったとして批判された写真を掲げ、鉤十字を意味する「swastika」をもじった「Swasticarsを買わないように」というプラカードを掲げデモに参加した人々(3月8日、米ジョージア州で、写真:AP/ロイター)
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 7月20日投開票予定の第27回参院選。各候補は投票日に向けて、ネットメディアを駆使しながら様々な情報発信合戦を繰り広げています。

 ただ、情報の観点から率直に記すと、顔をしかめざるを得ない発信もたくさん目にします。

 今回は情報の観点から、SNSで濫発される「アストロターフィング」の問題を検討しましょう。

アストロターフィング(Astroturfing)」。専門外では耳慣れない言葉かもしれません。

アストロターフ」は米国で市販されている人工芝の名前です。

 全世界のアリーナや競技場でアストロターフの人工芝が使用されており、芝から転じて「人工物」「人為的に作り出した」「自然発生ではないもの」の意味に使われています。

「民意」が市民に本当の「草の根」から立ち上がる、のならよいのです。

 そうではなく、特定の団体、政党や企業などが「人工芝的に」、つまり作為的、人為的に、でも見かけ上は「草の根」を装って情報を発信することを「アストロターフィング」と呼びます。

 さて、どうでしょう。いま私たちの目の前で山のように目にしませんか?

 だから感心しないわけです。

 過去最悪の例を挙げるなら、2016年の米大統領選挙と英国のEU離脱は歴史に禍根を残すアストロターフィングになりました。

 投票終了後、大規模情報ネットワークを活用~濫用した(ケンブリッジ・アナリティカ)事件が明らかになりました。

 しかし、再発防止に本質的な解決策は確立していません。

 さらに2022年秋の「生成AI」ブーム以降、BOT(ボット)など、自動システムを用いた「アストロターフィング」が急速に広まり、昨年の米大統領選、そして今年の参院選挙を迎えています。