新しく派遣された土地の社会を理解するには
──「ムフタール」という地区の長と関係を構築し、コミュニケーションを持つことが極めて重要であると書かれていました。
萩原:ムフタールは共同体の長のような存在で、必ずしも血筋や血縁関係などによって決まるものでもないようです。トラブルや抗争の問題解決のプロセスにおいても、ムフタールの存在は極めて重要でした。
新しい土地に派遣された際には1週間くらいで、そこの社会がどのように構成されているのか、ある程度、学ばなければなりません。その時に支えてくれるのが、現地のスタッフ(その国の住民のスタッフ)です。文献から学ぶこともありますが、より重要なことは、現地の人たちが語る現地の感覚を嗅ぎ取ることです。
萩原健(はぎわら・けん)
国境なき医師団(MSF)
緊急対応コーディネーター
1967年、神奈川県生まれ。慶應義塾大学卒業。石油開発企業勤務を経て2008年から国境なき医師団に参加。2017年から緊急対応コーディネーター兼活動責任者に。紛争、難民・国内避難民、災害、感染症流行対応など、数々の現場を経験し現在に至る。
長野光(ながの・ひかる)
ビデオジャーナリスト
高校卒業後に渡米、米ラトガーズ大学卒業(専攻は美術)。芸術家のアシスタント、テレビ番組制作会社、日経BPニューヨーク支局記者、市場調査会社などを経て独立。JBpressの動画シリーズ「Straight Talk」リポーター。YouTubeチャンネル「著者が語る」を運営し、本の著者にインタビューしている。