病院に来る人の中には重度か中度の栄養失調の大人や子供がいた
萩原:木の柱にビニールシートを巻き付けたような出店が並んでいて、携帯電話のSIMカードやちょっとした食べ物などさまざまなものが売られていました。椅子を置いて、床屋をやっている出店もありました。
しばしば目にする売り物は水道の配管部品です。ガザで水の管理は重要な関心事です。イスラエル軍の攻撃で破損した水道管を修理するための部品が道端で売られているのです。
数十万人が海岸通りに追いやられてきているので、通りは人でごった返しています。歩く人、ロバを引く人、車で移動する人などで、まるで日本の縁日で肩がぶつかるぐらいの距離感で人々が歩いているような雰囲気です。
私たちもよくその海岸通りを車で移動しましたが、わずか10キロの移動でも1時間以上の時間をみていました。海岸通りでは、ズタ袋を引きずった子どもたちがものを拾いながら歩いています。拾ったものを売るつもりなのかもしれません。
──ガザでは、イスラエルによる食料制限によって深刻な飢餓が発生していると報じられています。
萩原:医療団体として、どの程度の飢餓が発生しているのかは調査をしないと正しいことは言えません。ただ、私たちのチームが入っていた病院は産科と小児科がメインでしたが、そこに来ていた人たちには、大人も子供も重度の、あるいは中度の栄養失調が見られました。
通りの出店で食べ物も売られていますが、普通に買える値段ではないのです。タバコ1本が日本円で数千円という異常な物価になっています。
私の滞在中に3回ほど空からの人道援助物資の投下がありましたが、200万人以上の人が食料を求めている状況ですから、少々の援助物資では全く足りません。
──イスラエルの攻撃が近づくと「とどまるか」「退却するか」「どこまで進むか」と議論する描写が数カ所ありました。