山本 もう1つ、現場で感じるのは、公明党さんの都議選の構えとか運動っていうのは、まあすごいんですよ、本当に。事務所の前にずっと人が立ってるぐらいで。もう動員もそうだし、遊説か、本人の絶叫を含めて、相当なんですよ。もう組織政党の中では群を抜いて、ものすごくやる。その公明党がこうなっているのはやっぱり構造的に分岐点に差し掛かっているのか。
たぶんそうやっても票が出なくなってるんでしょうね。壮絶な悲壮感を伴った絶叫に近い演説、そういう強力な運動をされる方々なんですけど……。それだともうダメなんですかね?
米重 東京は無党派が多い。無党派の移り気な状況はなかなか読み切れないし、アクセスもし切れないという、組織政党としての不得意さみたいなところが、かなり強く出ちゃった部分もあるとは思うんです。ただ、同時に結構まずいんじゃないかなと思ったのは、まさに公明新聞に書いてあった情勢の中身です。
見てみると、まず都民ファーストの勢いを全然評価できていない。地域によっては、無所属とか無党派系の支持が強い特定の候補者がいるんですが、そういった人たちの得票力もちゃんと評価できていない。ですから、上位として記載されているのは自民党とか立憲民主党とか共産党とか、支持層が高齢層偏重な政党の候補者ばかりです。公明党の候補が低く評価されているのはいつものことなので、それは割り引いて読んでいたんですけど、それ以外の部分の評価がちょっとおかしい。つまり、公明党は仲間の候補者が選挙区の中で何位にいるのか、ちゃんと分かっていないんじゃないかなと公明新聞を読んで思っていたんです。
これは推測ですが、背景として電話調査に依拠していることに問題があるんじゃないでしょうか。というのは、自民党の調査結果とされるものもよく流れてくるんですけれども、それが本物だとすると、去年の衆院選でも、都心部で共産党の支持率が15%だとか、20%だとかという数字が流れていたんです。5人に1人が共産党員なわけがないじゃないか、という話です。それは相当、政治意識の高い高齢層の人たちを煮詰めたようなところに対して、しかも電話でアクセスできなくなっている状況でかろうじてつながったところを調べたものを「調査だ」と言っているから、そういう数字が出るんだと思うんですよね。
でも、東京の無党派層の動向は、いよいよそれでは読めなくなってきている。若い人たちは、SNSを通じて情報収集をしているので、ネット世論的なものがリアルの選挙に決定的な影響を及ぼすようになってきている。そういう部分の票読みができないから、相対的に自分たちが今何位にいるということを選挙区ごとに把握できず、新宿は落とす、大田は共倒れという現象が起きているのではないか。
やはりこれはたまたまではなく、根深い構造的な問題を公明党が抱えているのではないかと思います。
山尾ショックの影響、都議選では特になし
――じゃあ次に参議院選挙の候補に山尾志桜里さんを立てて、まあそれを公認を取り消すということで、山尾ショックと言われたあの国民民主党について伺いたい。今回苦戦が予想されましたが、最終的には18人立てて9人当選。これは国民民主党としては一安心ということのようですけども、この数字はどういうふうにご覧になられますか。
米重 9議席というのは上々なんじゃないかと思います。「躍進」と評価するのが客観的な見方じゃないかなと感じますね。というのも、もともとゼロなんですよね。前回の都議選では4人立てて4人落ちている状況でしたから、それと比べると相当勢いがあるというのがこの選挙結果の妥当な評価だと思います。
一方で、山尾ショックと言われるような、その比例候補者の擁立に端を発した支持率の大きな下落については、まだ下げ止まったかどうか分からない状況で都議選になっている。報道各社の世論調査を総合すると、ピーク時と比べて大体支持層の4~5割ぐらいの人たちを失ってしまった。ただそういった影響も、もしかしたら都議選である程度踏みとどまり、なんなら躍進したというアナウンスメント効果でもって下げ止まってくる可能性もある。その意味では、私から見ると、プールの底に足をつけたような状態にあるんじゃないかなと見ています。
――山本さんはいかがですか。
山本 これも陣営側的な視点になってしまうんですけど、この間の国民民主党の躍進は都民ファーストにとっては脅威でした。去年の今頃の段階では、国民民主党の候補者が出る選挙区に都民ファーストは出さない、都民ファーストの候補者が出る選挙区には国民は出さない、みたいな暗黙の共通認識があったんですけども、春ぐらいの国民民主党の勢いがすごいもんだから、「これはもう約束を反故にされて、国民民主党の候補がどんどん来るだろう」というふうに、再生の道同様に、脅威だったんです。
それが急に支持率が低下したということで、都民ファーストとしては支持層が多少かぶりますから、正直、安堵した面はありました。
ただ、山尾ショックは国政の動き。都議選にはそんなに大きな影響はない。今年は都議選と参議院選が重なる12年に一度の年で、都議選の結果が参院選に連動すると言われているわけです。実際連動はしてるんですけど、ちょっと違うんですね。
それでも山尾さんの件もある中で、従来から国民主党を支持している人の一定層から得票してなんとか9議席にまとめたっていうのはすごいと思います。「山尾ショックでダメだ」という状況ではなかった気がします。
米重 そうですね。実際、玉木さんの街宣の様子を見ていて、主だった党首クラスの人たちの演説の中で、小池百合子さんを除けば、玉木さんに一番人が集まっているような感じでした。
山本 現場からはそういう情報があって、「玉木さんが来たらやっぱり結構人が集まるね」みたいな話はチラチラ出ていました。

米重 しかも集まっている人たちは結構若くて、いかにも無党派層っぽい人たちが多い。
山本 東京都の無党派みたいなところをうまく捕まえているのだなということは、街頭を見たら分かった。