
~ 中小企業の今とこれからを描く ~
日本政策金融公庫総合研究所では、中小企業の今とこれからの姿をさまざまな角度から追うことで、社会の課題解決の手がかりを得ようとしています。最新の調査結果を、当研究所の研究員が交代で紹介していきます。今回のテーマは生涯現役社会における高齢経営者の事業承継です。
(中野 雅貴:日本政策金融公庫総合研究所 研究員)
60歳以上の8割以上が「働きたい」
少子高齢化が進展するわが国においては、働く意欲と能力のある人が年齢にかかわりなく働き続けられる生涯現役社会の実現が求められている。
こうした社会的要請を踏まえ、2013年に改正された高齢者雇用安定法の経過措置が終了した2025年4月以降は、企業に対して65歳までの雇用確保が完全に義務化された。企業にとっては負担増となる側面もあるが、人手不足が深刻化するなかで、自社で長年勤めてきた経験豊富な高齢者は貴重な戦力であり、継続して働いてくれることを期待してもいる。
では、労働者の意識はどうだろうか。内閣府「高齢者の経済生活に関する調査」(2024年)によると、60歳以上の8割以上が60歳以降も働きたいと回答しており、「働けるうちはいつまでも」(22.4%)とする高齢者も多い(図-1)。
生涯現役社会を実現するためには、60歳以上の労働者が働き続けられる環境の整備が不可欠であり、それは政府、企業、労働者の3者に共通する認識となりつつある。
