
(西田 亮介:日本大学危機管理学部教授、社会学者)
果たして「賞味期限切れ」なのか
現代日本社会における政治参加の様式が、ソーシャルメディアの浸透を媒介として新たな局面を迎えていることは多くの人が認識しているはずだ。
既存の政党組織や伝統的メディアの権威が相対的に低下する一方、有権者はSNSや動画配信を通じて政党や政治家が発信する、政治家目線で発信される政治情報に直接アクセスし、個々の政治家と擬似的な関係性を構築するようになりつつある。
この潮流が決定的な形で可視化されたと多くの人が認識したのが、2024年のことであり、ひとつの顕著な例が同年7月の東京都知事選挙であった。
主要政党の支援を受けることなく、前広島県安芸高田市長の石丸伸二氏が約165万票を獲得し、無所属ながら既存野党の支持を取り付けた蓮舫氏を上回って次点につけた事実は、それが2010年代からの様々な政治的挑戦の延長線上にあると捉えられるとしても永田町の力学や常識では簡単には説明のつかない地殻変動の始まりを予感させた。
この選挙で示された巨大な民意を背景に、石丸氏が2025年夏の都議会議員選挙を見据えて設立したのが地域政党「再生の道」だった。その政治的実践は、2020年代の動画時代における新しい政治活動の象徴的存在になるかに思われた。
しかしその一方で、既に「賞味期限切れ」という声も出されている。情勢調査の結果が低調であることや、少なくとも本稿執筆時点における石丸氏の活動量の少なさ(か、報道などからあまり伝わってこなかった現状)を受けてのことと考えられる。
この相反する見立てをどのように受け止めるべきだろうか。
本稿は、こうした問題意識から、政治活動として行われた6月7日(土)の再生の道のJR蒲田駅西口前における一日の締めくくりの街頭演説を見に行った記録を記している(以下の写真はすべて筆者撮影)。
なお筆者と石丸氏のあいだに、先日共著『日本再生の道』(幻冬舎)を出版した利益関係性があることを記しておく。