ゴールデン・ドーム構想は外交上のブラフか

パウエル:ただ1点、この時点で私が断言できることは、トランプ大統領の任期期間中にゴールデン・ドームは完成しないということです。数十年かけて実現するかどうかという技術です。そもそもカネがかかりすぎます。

 しかも、アメリカにとっての核攻撃の重要な脅威であるロシアは、ますますアメリカに攻撃を仕掛ける力をなくしている現状で、なぜ慌ててそのような大掛かりな防衛システムが必要なのか。

 ゴールデン・ドーム構想を今語ったのは、外交上のブラフではないかと想像します。1983年にレーガン大統領がSDIを発表したときも、ロシアを驚かせて交渉のテーブルに着かせるという目的がありました。

マシュー・パウエル(Matthew Powell)
英ポーツマス大学戦略・航空力学研究科教授
航空戦力史家。研究対象は、戦術航空戦力の発展、空軍と航空産業の関係、航空戦力と戦略、国際安全保障、戦略研究、歴史的および現代的な防衛調達など。第二次世界大戦中のイギリス空軍における戦術航空戦力の発展、そして戦間期におけるイギリス航空省による航空産業の合理化と能力向上への取り組みについて、多数の論文を発表。

長野光(ながの・ひかる)
ビデオジャーナリスト
高校卒業後に渡米、米ラトガーズ大学卒業(専攻は美術)。芸術家のアシスタント、テレビ番組制作会社、日経BPニューヨーク支局記者、市場調査会社などを経て独立。JBpressの動画シリーズ「Straight Talk」リポーター。YouTubeチャンネル「著者が語る」を運営し、本の著者にインタビューしている。