ミサイル防衛システムは核兵器を無効化するか?
──ミサイル防衛システムは、国土の狭い国ではかなり実用性の高いものを用意できますが、広い国ほど、全土を守るようなシステムを用意することは難しいですよね?
パウエル:そうです。でも、本当に広大な国土の全てを完璧に防衛できる状態にしておく必要があるのかという疑問があります。そしてやはり、どの辺りからどんな攻撃があり得るかを一定想定した対応のほうがコストを抑えつつ精度は上がります。
国土のあちこちに防衛システムを配備すれば、安全は増しますが、凄まじい費用になってしまうでしょう。配備したらそれで終わりではありません。メンテナンスや係員の配置にも、継続的に費用がかかります。可能性のあるポイントを絞れば、はるかに安く効果的な防衛システムが構築できるのです。
ゴールデン・ドームのように宇宙に配備するとなると、軌道に乗ってさまざまな位置関係が変わりますから、計算も複雑になります。
──世界中の国々が、洗練されたミサイル防衛システムを持つことができれば、事実上、核兵器は無意味になっていくと思われますか?
パウエル:核兵器の存在感は減るでしょうが、本当にすべての国がそこまで高度な防衛システムを必要とするとは思えません。たとえば、北大西洋条約機構(NATO)加盟国は、基本的にアメリカの核の傘に守られています。攻撃されれば集団的自衛権が発動するので、まず攻撃されません。
トランプ政権下ではどんな判断になるのか不安もありますが、基本的には米軍の基地を置いている東南アジア諸国なども、アメリカに守られているという理屈です。だからこそ、こうした国々は自前の核兵器を持たなくてもいいという判断ができるのです。高度な防衛システムも同じです。
たしかに、核ミサイルを確実に撃ち落とせる防衛システムを構築できたなら、核兵器の存在意義は損なわれるでしょう。しかし、そうなる前に、それを阻止しようという動きが敵国から起こる可能性もあります。
同時に、宇宙における兵器開発も進んでいます。宇宙の中で攻撃し合うという技術で、その中には核兵器も可能性として含まれています。そこまで考えると、国土を宇宙から守る設備そのものが、宇宙で破壊される可能性もある。やはりさまざまな可能性が想起されます。