ゴールデン・ドームは戦争のリアリティをラディカルに変える
パウエル:加えて、レーガン大統領がSDIを発表した時には「もしこの技術をアメリカが完成させたらソ連の核兵器は無意味になる」「だから完成前にソ連は攻撃して潰しにかかるだろう」という議論も出ました。
その技術が完成されては困る他の国々もいるということです。中国やインドはどんな反応をするでしょうか。自分たちも同じ技術を持とうとするかもしれないし、アメリカの突出した優位性を理由に国際法に訴えるなどして、計画を止めさせようとして緊張関係が高まるかもしれません。
宇宙に兵器を持ち込んでいいのか。宇宙で戦争を行っていいのか。こうした議論も以前からあります。複数の国が連合を組んで反対声明を出すかもしれません。さまざまな可能性を考えると、どの程度本気で実現に向けて動き出すのか大いに疑問です。
もしこうした防衛システムを開発することに成功したら、他国との関係やパワーバランス、戦争のリアリティーをラディカルに変えることになるでしょう。
──現状では、イスラエルのアイアン・ドーム・システムが世界的に見て最も進んだミサイル防衛システムなのでしょうか?
パウエル:そうです。しかし、これはトランプ大統領が目指すゴールデン・ドームのような、大陸間弾道ミサイルを撃墜するようなシステムではありません。ガザやレバノンなどからの短距離のミサイルやロケット弾攻撃を防ぐ、地上から迎撃ミサイルを発射する防衛システムです。
このシステムは、レーダーやセンサーで迅速にターゲットを見極めて照準を合わせて攻撃します。それでも100%撃ち落とせるわけではありません。しかし、リスクを最小限に抑えるという意味では、現状、最も精度の高い防衛システムです。
ゴールデン・ドームが完成したとしても、何もかも例外なく撃ち落とせるとは思えません。ミスもありますし、ターゲットを見失う可能性もあります。
イスラエルは地政学上、あのような防衛システムの設置は急務でした。大陸間弾道ミサイルのような巨大なミサイルは迎撃の対象外ですが、イスラエルの敵であるハマスには大陸間弾道ミサイルのような兵器は保有できません。持ち込めないし、維持もできない。
イギリス、アメリカ、日本、中国、ロシア、インドなどの国々がより精度の高い防衛システムの導入を考えるとしたら、イスラエルのアイアン・ドームでは不十分です。
