検察が捜査していたのは、韓流スターのペ・ヨンジュン氏が投資したことを大々的に宣伝し、別名「ヨン様コイン」と呼ばれた仮想通貨「クイーンビーコイン」が、投資家らから300億ウォンを横取りしたという事件だ。検察はコイン運営者であるイ氏の携帯電話を押収してフォレンジック捜査する過程で、2018年の地方選のさなか、イ氏が国民の力の政治家のA氏と全氏をつなぎ、A氏は全氏に1億ウォンを渡したとことを記した文書データを確認した。

大統領選勝利直後の尹錫悦氏に面会していた統一教会幹部

 全氏が国民の力の候補公認に介入した状況をつかんだ検察は本格的な捜査に突入した。しかし、A氏は当時、公認を受けることができず、1億ウォンを返してもらったことが確認された。

 A氏の件は未遂に終わったが、全氏は検察によって公職選挙法違反の疑いで起訴され、以後、検察は全氏の「公認介入」に関する捜査を拡大し、22年5月の地方選挙で少なくとも3人から金を受け取り、公認を斡旋したという事実を把握した。

 さらに検察捜査の手は金建希夫人にまで伸びた。検察によると、全氏は尹錫悦政権が誕生すると、建希夫人と親しいということを誇示して、政治家を相手に公認ビジネスを展開しただけでなく、政府にコネを付けたい企業や団体を相手に巨額の謝礼を受け取ってロビー活動もしていたとみられている。このうち、検察が最も確実な状況を把握したのが、統一教会の請託事件だ。

 統一教会のユン・ヨンホ元世界本部長は尹前大統領の当選直後の22年3月、尹大統領当選者と1時間の単独面談を行った。ユン氏は韓鶴子(ハン・ハクジャ)総裁の秘書室事務総長と統一教会の関連財団・孝情国際文化財団の理事長を歴任するなど、「韓総裁の右腕」と呼ばれた人物で、自ら「韓総裁の息子」を自称しているほどだ。現在は、財団理事長在任時の横領などの疑いで検察の調査を受けている。

 大統領選に勝利した直後の尹錫悦氏に会ったユン氏は、その年の5月の統一教会の行事で、「国家ビジョンの方向性を提示し、(尹氏から)暗黙的な同意を得た」と主張したという。