
韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領が弾劾(だんがい)で失脚するやいなや、検察と警察は尹前大統領の不正に対する捜査を加速している。捜査対象になる事件は金建希(キム・ゴンヒ)夫人の疑惑が大部分で、その中には日本でも悪名高い統一教会(現世界平和統一家庭連合)関連の疑惑が含まれている。
その中心は、統一教会側が「乾真(コンジン)法師」と呼ばれる宗教人を通じて、建希夫人側に6000万ウォン(約600万円)相当のダイヤモンドネックレスとシャネルのバッグをプレゼントしたという疑惑だ。
「ヨン様コイン」事件が予想外の方向に進展
乾真法師――本名は全成培(チョン・ソンベ)、以下全氏と表記――は韓国仏教の一宗派である「日光曹渓宗」所属の僧侶だ。日光曹渓宗は韓国仏教界から追放された僧侶が作った宗派ということで正当性について疑問符がつけられており、全氏(乾真法師)に対しても「僧侶ではなくシャーマン」という見方がある。
2013年頃、日光曹渓宗の文化財団は金建希夫人が経営する「コバナコンテンツ」を後援することになった。これをきっかけに、全氏はコバナコンテンツ顧問として建希夫人と親交を持つようになる。そうして建希夫人と親交を深めた全氏は、22年に尹錫悦氏が国民の力の大統領候補となった大統領選時の選挙キャンプでも活動した。
この選挙戦当時、ある疑惑が噴出した。尹夫妻が「天空」というシャーマンをメンターにしているというもので、これが「尹錫悦候補がシャーマンに凝っている」とスキャンダラスに報じられてしまう。その余波をうけ、やはりシャーマンと疑われている全氏に対してもメディアの報道が殺到し、結局、全氏は尹錫悦選挙キャンプから追いやられ、政界から姿を消していた。
それから2年余りが過ぎた昨年7月、再び全氏の名前が注目を集める事態となった。巨額のコイン詐欺を捜査していた検察の捜査網に全氏の名前が浮上したのだ。