最終的にAさんがゲットしたもの
結論から言うと、区役所の窓口でAさんは障害者だと確認が取れた。それによって、大田区から毎月4500円の手当を受けられることになり、都営の交通機関を無料で乗車できる「PASMO(パスモ)」もゲットしたのである。
障害者だという判定を受けることができたのは、Aさんのマイナンバーカードのお陰だった。それで過去の履歴をたどった結果、精神障害者だということが記録されていたようだ。マイナカード、「使えねえ」と思っていたが、今回はさすがに見直した。
Aさんは大人になってから障害者として生きてはいないが、普通学級で教育を受けてこなかったという点からも、十分に支援を受けていい立場にあるだろう。
結局、半日かかってAさんが手に入れたものは以下のとおり。(※あくまでAさんの場合。個人によって異なる)
・特別支給の老齢厚生年金(年額50万円程度)1年間分のみ
・老齢基礎年金と老齢厚生年金(年額110万円程度)を隔月で受給開始
・食料およそ10日分
・大田区心身障害者福祉手当(月額4500円)
・障害者専用PASMO(都営地下鉄、都バスは無料乗車可能)
それにしても、公的機関で支援を受ける際の「縦割り」の面倒くささは、よく指摘されることだが相変わらずだと感じた。結局、この日は年金事務所→大田区生活再建・就労サポートセンター→社会福祉協議会→大田区役所と4つの施設をはしごしたのだ。
いずれの窓口もとても親切に対応してくれたが、「その件については○○で聞いてみてもらわないとわからない」と言われることが多かった。
それぞれの制度が複雑なため、スペシャリストはいるけれども、広く浅く知識を持っているゼネラリストはいないという感じだ。Aさんのような人がこれらの機関を探し当て、すべての支援を受けるのは相当ハードルが高いだろう。
また役所の雰囲気も、敷居の高さを感じる。眼鏡にチェーンを付けたようなマダム相談員と、USA帽子のAさんという組み合わせは、ちぐはぐな印象だった。こうしたカルチャーの違いが、生活困窮者が支援を受ける機会を遠ざけているようにも思う。せっかく支援機関があるのに利用されなければ、それこそ税金の無駄遣いだ。
生活困窮者を支援するような機関は、いっそのこと平和島の競艇場か、大井競馬場のようなところに作ったほうがいいのではないか。