4.低速のウクライナ機を撃墜できない理由
その1:防空兵器が不足
戦時の防空態勢では、前線防空には短距離防空兵器、前線から都市や重要インフラまでの防空には中距離防空兵器、都市などの防空には長距離防空兵器を配備するものだ。
図2 戦時の一般的な防空態勢(イメージ)

したがって、現代戦では、レーダーと射撃指揮システムを備える防空兵器を配置しているところに、敵の大型で低速の自爆型ドローンが向かってくれば、3~5秒もあれば、100%撃墜できる。
ところが、ロシアは前述の無人機の発見も遅れ、飛行の経路上や目標上空でも撃ち漏らしている。
その理由の一つ目が、ロシアの防空兵器の不足である。
図3 ウクライナ大型無人機攻撃とその成功(イメージ)

ロシアは、領土が広大で国境が長いために、広域を防空しなければならない。そのため、多くの防空兵器が必要になる。
だが、2022年2月24日の侵攻開始以降から2024年5月3日までに、1153基の防空兵器が破壊された。
そのため、前線を重視して防空兵器を配備すれば、領土内の重要施設やインフラを守るための防空兵器が不足する。
しかも、防空兵器のレーダーや射撃指揮システムは、電子部品の塊である。
装置を製造するには、多くの電子部品と製造専門家、そして多くの時間がかかるものである。
ロシアは、配備に必要な防空兵器の数量が足りないのである。これがウクライナ大型無人機の攻撃が成功した大きな要因である。
その2:低空で向かってくるドローンを発見できない
低空、超低空域を飛行してくドローンを発見するには、高性能の監視レーダーが必要である。
監視レーダーは、電磁波を受けた航空機の小さな反射波を受けて、その位置や速度を測定できる。
レーダーは、ごくわずかな反射波を受けられるように設計されているために、地表面からの大きな反射波を受けると、航空機からの小さな反射波が地表面の反射波にのみ込まれ判別できなくなってしまう。
レーダーは、地表面の反射を受けにくくして飛行目標の発見を容易にするために、高い位置に設置する。
小高い山の頂上、ビルの屋上、高い建造物の上などだ。
また、識別が容易にできる高性能のレーダーが求められる。さらに、早期警戒機(AWACS)があれば、発見が容易になるはずである。
モスクワでは、防空のために早期に発見して撃墜する長距離&短距離防空兵器、また、それが撃ち漏らした場合に近距離で発見して撃墜できる短距離防空兵器を重複して配備してある。
それでも、ウクライナのBeaverドローンなどから攻撃を受け、撃ち漏らし、目標への突入を許している。
図4 ウクライナ中型無人機Beaver攻撃とその成功(イメージ)

この主な理由は、このドローンのレーダー反射面積が小さいこともあるが、ロシア製の監視レーダーの能力が低いからだろう。
もしも、早期に発見できていれば、防空ミサイル、機関砲、電子戦装置により、100%撃墜か落下させられていただろう。