
ロシアの求めに応じウクライナ戦争に参加した北朝鮮軍には、戦闘能力の面で多くの欠陥があった。
ドローンへの対応、電子戦、歩兵・戦車・砲兵の協同作戦、夜間戦闘、実戦的な歩兵の個人装備などである。
そのため、2024年11月中旬に投入された1万1000~1万2000人の兵は、わずか約2か月間で、死傷者4000~5000人(死傷者率35~45%)を出す結果となった。
その後、戦闘参加から3~4月間経った後には、死傷者数が9000人に達したという情報もある。
北朝鮮は、戦争の教訓を得るために軍高官の視察者を出している。
ウクライナ戦争での戦闘研究と対策に一定の成果が得られたのか、2025年4月5日付の朝鮮中央通信は、次のような訓練の実施を報じている。
「戦闘員の総合戦術訓練と狙撃兵器射撃競技は、現代戦の様相に即して特殊作戦武力の強化のための朝鮮式の新しい戦法を絶えず探究し、すべての戦闘員をいかなる戦闘状況の下でも課された特殊作戦任務を立派に、巧みに遂行できることを目的として実施した」
また、訓練の実情について61枚もの写真を掲載した。訓練写真の数量としては、珍しいほど多い。
これらを見ると、「北朝鮮式という戦い方、特殊部隊がどのように戦おうとしているのか」の一端が分かるので紹介する。
そして、時代遅れの兵器に加え、実戦的とは決して言えない現実とはかけ離れた北朝鮮軍の戦い方などについて考察する。
北朝鮮は、大きく2つに分けて、現在の兵器で短期的で応急的な改善と兵器の開発を伴う長期的な計画・整備を考えている。
今回発表しているのは、前者のことを示していると思う。
1.狙撃兵の偽装で身を隠す
北朝鮮特殊部隊の狙撃兵は、敵に発見されずに重要人物を正確な射撃で殺害することが求められる。1発必中なのだ。
まずは、ドローンも含めた敵に発見されないという点で分析する。
朝鮮中央通信の写真では、北朝鮮兵が周りの植生と同じ偽装を行っている。その兵が地面に伏せれば、その兵と地面を区別できず、敵は発見することはできない。
北朝鮮の軍事パレードでも、同じ偽装をしている特殊部隊兵が行進している。偽装は、兵にとっては当たり前のことだ。
各国の兵も偽装するのが戦闘行動の基礎であることを熟知している。各国の狙撃兵や自衛隊の狙撃兵も、北朝鮮と同じような偽装を行う。
ごく当たり前のことなのに、北朝鮮の金正恩総書記は今、なぜ兵が偽装をする訓練を視察するのか。そればかりか、写真まで掲載するのか。
ロシアに派遣された北朝鮮兵の多くは、ウクライナのドローンに発見されて殺害されている。
北朝鮮は、このことをかなり深刻に受け止めている。
ドローンが飛ぶ現代戦において、ドローンに発見されないように、完璧に偽装を行うことを目指しているのだろう。
写真1 偽装の狙撃兵
