4.北朝鮮は超小型迫撃砲、米欧はスイッチブレード

 写真7は、60ミリ迫撃砲(射程70~3500メートル)の射撃を行っている様子だ。

 兵士が左手に持っているのは60ミリ迫撃砲弾だ。写真の右上にその砲弾が飛翔しているのが見える。

 だが、この写真には、奇妙なところがある。

①迫撃砲は、曲射弾道のはずだが、飛翔している弾を発射位置から見ると、直射弾道になっている。

 間接照準射撃のはずの迫撃砲を直接照準射撃として使用しているのか。

 ロシア軍砲兵から協力を得られないので、北朝鮮軍兵の創意工夫なのかもしれないが、奇妙だ。

②実弾射撃訓練であるのに、ヘルメットを被らず防弾チョッキも着用していない。

 実弾を使用しない訓練で防弾チョッキを使用しているのに、実射では着用していない。訓練に統一思想がないのか。

写真7 60ミリ迫撃砲射撃の様子

出典 朝鮮中央通信2025年4月5日

 この兵器は個人携帯が可能であり、特殊部隊が保有するものだ。

 だが、なぜ今、北朝鮮軍兵が世界最小の迫撃砲を使う必要があるのか。

 ロシア軍からの砲兵の協力が得られないため、あるいは米国支援の「スイッチブレード」(自爆突入型航空機)に対抗し、似せようとしたのか。

 60ミリ迫撃砲は、曲射弾道で誘導ができない。また、風の影響を受けやすく、命中精度が悪い。

 スイッチブレードは発射装置が迫撃砲に似ているが、飛翔しながら映像を操作手に送り、その映像を確認しつつ目標に突入させることができる。

 北朝鮮は、おそらく、「スイッチブレードのような兵器を開発して持っているぞ」と言いたいのだろう。

7.旧式兵器生かす戦法と訓練では戦果出ず

 北朝鮮は、ウクライナ戦争の次の派遣に間に合うように、特に現在保有する兵器で戦い方の短期的な改善を行っている。

 しかし、時代遅れの兵器のままで米欧の近代的な兵器と交戦するには、いくら改善しても限界があり、無理がある。

 そのため、これらの写真には奇妙に感じる部分があるということだ。

 北朝鮮兵が、勇猛果敢に攻撃(突進)していることは認めるが、旧式の兵器で、あるいはロシアからの提供を得て戦っても、ウクライナ軍の銃弾や砲弾の前には役に立たず、損害を出すだけだ。

 北朝鮮公表の写真のように、兵士の戦い方を改善し、訓練したとしても、十分な戦果を得られることなく、再び大きな損害を出すことになるであろう。