人類の知の体系は書物によって受け継がれてきた(写真:New Africa/Shutterstock.com)
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(堀内 勉:多摩大学大学院教授 多摩大学サステナビリティ経営研究所所長)

人類の知の体系を身体知化していくプロセス

 本コラムでは、「古典から学ぶ人生の生き方」という視点から、教養についてさまざまに論じていますが、今回は、教養とはそもそも何なのかを考えてみたいと思います。

 一言で「教養」といっても、英米のリベラルアーツ的なものから旧制高校のドイツ哲学的なものまで様々あり、明確な定義はありません。最近よく見かける「教養としての」という本などでは、「入門編としての」「初心者向きの」という意味で使われています。

 これに対して、私自身が考える教養を図示すると、以下のようになります。

 赤い丸枠内にあるように、人類の知の体系を「学習→思考→実践」という順番で自らの中に取り入れ、それを身体知化していくプロセスが教養だというのが私の理解です。

 出発点となる知の体系は、人類がその誕生以来、積み上げてきた知の集積です。人類の知の歴史については拙著『読書大全』で詳述していますが、その代表的な例が、中世の大学で確立された自由七科を原型とするリベラルアーツです。

 自由七科というのは、宇宙の秩序を理解する四学(算術、幾何学、天文学、音楽)と言葉を扱う三学(文法学、修辞学、論理学)から成る、人間を真の自由な存在に導くための学問体系です。

 もちろん、人類の知の体系はリベラルアーツに限りません。私たち人類が言葉や文字や文化を通じて脈々と受け継いできた、あらゆる知の集積を意味します。

 私が読書の重要性を強調するのは、これまで人類の知の体系は、主に書物の形で受け継がれてきたからです。