トランプ関税は世界経済を混乱させている(写真:UPI/アフロ)

(堀内 勉:多摩大学大学院教授 多摩大学サステナビリティ経営研究所所長)

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【前編】トランプ関税は他者からの搾取、あなたのビジネスは「新しい富」を創出しているか?
    

ノーベル賞経済学者スティグリッツが考える「国を豊かにする方法」

 前編でみたように、「善いビジネスのあり方」は、さまざまに論じられていますが、もう少し簡単な物差しとして私が常日頃、念頭に置いているのは、「このビジネスはゼロサムかプラスサムか?」という視点です。

 ノーベル賞経済学者のジョセフ・スティグリッツの『スティグリッツ PROGRESSIVE CAPITALISM(プログレッシブ・キャピタリズム)』には、「国を豊かにする方法」には二つあると書かれています。

 ひとつは、イギリスに代表されるかつての植民地の宗主国のように、ほかの国から富を略奪してくること。つまり、全体のパイは一定で変わらない中で、ゼロサムゲームの勝者になることです。

 もうひとつは、イノベーションや学習を通じてゼロから富を創造すること、つまり、プラスサムの世界を構築することです。スティグリッツは、真の意味で世界を豊かにするのは後者だけだと指摘しています。 これは日常のビジネスにもそのまま当てはまります。ビジネスにおいて利益を出す方法は二つしかありません。「相手から富を奪ってくる」か「新たな富を創出する」かです。

 企業財務的な視点から言い換えれば、利益を出すには、「売上を増やす」か「経費を削減する」しかありません。