ベッセントは敏腕不動産ディーラー

 高関税をちらつかせる「恫喝外交」を続けているのは、ベッセント財務長官とナバロ貿易・製造業担当上級補佐官だ。

 ベッセント氏は、イエール大学を卒業後、ソロス・ファンド・マネージメント社を経て、グローバル・マクロ投資マネージメント社を創設した。ウォール・ストリートの実力者だ。

(トランプ政権での唯一のLGBTQであることを公言している

 ナバロ氏はトランプ第1次政権の時から大統領上級顧問としてトランプ氏の「頭脳」として仕え、第2次政権では、ベッセント氏と共に貿易赤字解消の急先鋒だ。

 ベッセント氏が「柔軟」さが持ち味とすれば、ナバロ氏は学者肌(カリフォルニア大学アーバイン校名誉教授)だが「強硬」さが目立っている。

 5大老には、そのほかバンス副大統領とトランプ氏の「知恵袋」ミラー氏がいる。

 バンス氏は2月14日、ミュンヘン安全保障会議で「欧州の脅威は欧州の内部にある」として欧州批判を展開するなど、欧州各国からは「(トランプ氏に訓練された)攻撃犬」(Attack Dog)と呼ばれている。

 最近ではトランプ氏が買収の対象にしているデンマーク領グリーンランドに夫人同伴で訪問している。

家老と「名だけ家老」の入れ替わりは?

 名前だけは老中(閣僚)だが、本来閣僚(長官)としてやるべき主要業務をこなしていない「名前だけ老中」は以下の通りだ。

①ピート・ヘグセス国防長官
②マルコ・ルビオ国務長官
③ジェミソン・グリア通商代表部(USTR)代表
④ハワード・ラトニック商務長官
⑤ケネス・ケロッグ・ウクライナ担当特使(閣僚ではない)

「名前だけ老中」の中には、ヘグセス国防長官のように国家機密の取り扱いに全く疎くて、「シグナルゲート」*1を起こして、野党民主党から厳しく批判されているトラブルメーカーもいる。

 すでに国防総省の監察官がヘグセス氏が機密情報の扱いを定めた法律に違反したかどうかを認定する調査を開始している。

 ヘグセス氏は、ハワイ、グアム、フィリピン、日本を歴訪し、「就任あいさつ」は終えたが、いつまで国防長官として留まれるのかは分からない存在だ。

*1=へグセス氏が司会者になり、米政府の高官たちが、イエメンの親イラン武装組織フーシに対する武力攻撃計画について、メッセージアプリの「シグナル」(Signal)でやり取りした内容が流出した事件。

 一方、上院では屈指の外交通として知られ、トランプ政権に乞われて国務長官として入閣したルビオ氏だが、外交上の懸案であるウクライナ戦争やイスラエル・ハマス戦争の停戦交渉では一切お呼びがかからず仕舞い。

「ルビオ氏が100日の間にやったことと言えば、国務省内の機構改革ぐらいだ」(主要メディア国務省担当記者)。

 イーロン・マスク氏率いるDOGE(政府効率化省)からの「お達し」を受けて、国務省170の官職削減、大使館・領事館を含む132部局を閉鎖。

npr.org/2025/04/22/marco-rubio-announces-overhaul-of-u-s-state-department

 ルビオ氏の仕事は諸外国を相手にした外交ではなく、会社で言えば総務部のやる内部機構の整理だ。

 トランプ氏は各種世論調査の結果に怒り心頭に発しているという。

 どうすれば、有権者に褒めてもらえる政治を行えるか。

 大老5人と名前だけの老中5人を差し替えて人心一新を図るのか。これまでの政策の大転換に舵を切るのか。

 こればかりは誰にも分からない。

 トランプ氏は予測不可能な大統領。だから米国民の59%がトランプ氏の一挙手一投足を「恐れて」いるのだろう。