合格点は不法移民追放だけ

 なぜ、トランプ氏はこれほど不人気なのか。

 その理由は、大統領選でトランプ氏に投票した有権者たちが不支持に回ったからだ。

 とにかく何をやり出すか分からないことに米国民は期待する半面、「怖い」のだ。

 ニューヨーク・タイムズの世論調査によると女性の67%(男性は52%)が「怖い」と答えている。国民の多くが「行き過ぎ」(Go too far)と見ている。

 トランプ氏の100日目の「通信簿」の内容を具体的に見ると、以下の政策で米国民が支持しているのは以下の通りだ。

移民政策:47%
ウクライナ戦争解決策:35%
連邦政府縮小・予算削減:44%
関税政策:42%
経済政策:43%

Five Takeaways From the Times/Siena Poll on Trump - The New York Times

 言ってみれば、不法移民対策だけがギリギリの合格点Cマイナスで、あとは落第だったことになる。

 それにトランプ氏は“授業態度”が悪い。

 トランプ(Playing Card)なのにハート(心)がないのだ。独断専行で思いやりとか配慮がない。

トランプ政権の“キッシンジャー”

 100日を前に、外交専門誌「フォーリン・ポリシー」(Foreign Policy)のサイトが、トランプ外政を実際に立案・実践している5人の「ドライバー」(運転手)と5人の「パッセンジャー」(乗客)の名前を上げて、勤務評定している。

The Most (and Least) Influential Foreign-Policy Officials in Trump’s Second Administration

「ドライバー」はいわば、トランプ幕府の5大老、「パッセンジャー」は「名前だけ老中」の5人ということになる。

 まず5大老は以下の通り。

①ピーター・ナバロ通商・製造業担当大統領上級顧問
②スコット・べッセント財務長官
③スティーブ・ウィトコフ中東担当特使
④J・D・バンス副大統領
⑤ステファン・ミラー大統領次席補佐官

 特に注目されるのは、ウィトコフ中東担当特使だ。

 指名された時はイスラエル・ハマス戦争の停戦などが主任務だったのが、いつの間にかウクライナ戦争終結工作で暗躍し、すでにロシアのウラジーミル・プーチン大統領と4回も会談している。

 まさにニクソン政権下でのヘンリー・キッシンジャー補佐官(のちに国務長官)のような役割を演じている。

 本来ならマルコ・ルビオ国務長官が外交交渉に当たるべきなのに、(またウクライナ担当特使のキース・ケロッグ氏が当たるべきなのに)なぜ、ウィトコフ氏なのか。

 トランプ氏からの説明は一切ない。

 1つだけ明らかなのは、同氏はトランプ氏と同じ不動産・投資業で財を成した「盟友」で、肝胆相照らす仲だということ。

 外交経験はゼロだが、ビジネスで鍛えたトランプ流の「ディール」(取引)に精通しており、トランプ氏からは絶大な信頼を得ている。