スタグフレーションはもはや規定路線?

 最も悲観的な見解を述べているのがダドリー元ニューヨーク連銀総裁だ。

 ダドリー氏は「スタグフレーションは米国が期待できる最良のシナリオかもしれない」と述べている。不景気の物価高の状態を表すスタグフレーションは景気後退(リセッション)より深刻な事態と言われているが、ダドリー氏は深刻なリセッションに陥り、インフレも高止まりするという極度のスタグフレーションの到来を予測しているようだ。

 サマーズ元財務長官の見解も同様だ。

 サマーズ氏は「関税引き上げで米国はリセッションに向かっている可能性が高く、国内で200万人が失業する恐れがある」と警告を発している。

 米国経済の見通しが急速に悪化するにつれ、バブル気味の金融市場にストレスの兆候が積み上がっている。

リーマンショックを思い起こさせる(写真:ロイター/アフロ)

 ロイターは8日「世界のヘッジファンドの年初来のパフォーマンスはマイナス3%となり、ネットレバレッジも歴史的低水準目の前の37%まで低下した」と報じた。ネットレバレッジはファンドの保有価値に対してロングポジションとショートポジションの差額を測定したもので、低いほどポジションが保守的とみなされる。ヘッジファンドもリスクオフに舵を切らざるを得なくなっているようだ。

 筆者はかねてから米国のクレジット市場(社債、証券化商品、信用リスクを原資産とする派生商品=デリバティブ=などを取引)の動向に注目している。クレジット市場は2008年のリーマンショックの震源地だったからだ。

 気がかりなのは米国の社債市場において新規発行が極めて低調になっていることだ。トランプ関税で米国経済がリセッション入りするとの懸念から、米国債利回りと比較した信用スプレッド(リスクに応じて上乗せされる金利)が拡大しているというのがその理由だ。

 中でも信用格付けが低い社債(ジャンク債)が大打撃を被っている。