90年代に全日本プロレスで活躍していた覆面レスラーのパトリオット(デル・ウィルクス)がテーマ曲に『Black Magic』を使用しており、93年に株式会社バップから発売された『全日本プロレス テーマ大全集 2』にも収録された。

全日本プロレス時代のパトリオット(右)。左は小橋健太(写真:平工幸雄/アフロ )

 このアルバムを手に取ったプロレス・ファンの一人が、ローカルテレビ局のサンテレビ(兵庫県神戸市)の番組「サンテレビボックス席」のプロデューサーだった。

「サンテレビボックス席」は69年の開局当初から続く名物番組で、タイガースの試合をプレーボールから試合終了まで完全中継することから、虎ファンに絶大な支持を得ている。

 そして、タイガースが勝った試合では番組のエンディングにハイライトシーンが流される(引き分けや負けたゲームでは原則ハイライトシーンはない)。そのBGMにとプロデューサーが『全日本プロレス テーマ大全集 2』の中から選んだのが『Black Magic』だった。約25年前のことだ。

 以来、約四半世紀にわたって、正式なタイトルを知らなくても虎ファンに愛される曲となった。

虎党に愛された曲、作曲者本人の心に引っかかっていた録音状態

 華麗なギター・テクニックと耳に残るメロディが印象的な『Black Magic』は、ビーチ氏の代表作のひとつだが、91年に発表したバージョンを本人はあまり気に入っていないという。

「曲のアイデア自体は85、6年にできていた。『Guitars That Rule the World』に参加を依頼された時、ちょうどウィンガーの活動が忙しかったので、急いでギターとベースを弾き、ドラムマシンを指で打ち込んで全部自分で演奏して仕上げたものだった。たった4トラックのレコーダーで録音したから、ギター以外の演奏も音質もぜんぜん良くない。でも、気に入ってもらえたんだろうね、アルバムのトップに収録してもらえたんだよ」

レブ・ビーチ氏(2017年筆者撮影)

「そういえば、ずいぶん昔から取引明細書を見ると定期的に〔Black Magic-Japan〕と記載されていて、誰が日本でこの曲を聴いたり演奏したりしているのかなと疑問だったんだよ。最近になって、阪神タイガースという野球チームのテレビ番組で、ずっと使われていることを日本のファンが教えてくれた。

 ただ、91年の音源を今でも使っているのだとしたら、ちょっと不本意ではあるんだけどね」