トランプ氏はウクライナをカードとしてしか見ていない
プーチンやトランプ氏がまき散らす「数千人のウクライナ兵士が完全に包囲された」「選択肢は降伏か死の2つだけ」というような事態は起こっていないと同誌は指摘する。和平交渉を主導するトランプ氏はウクライナをカードとしてしか見ていない。

プーチンは30日間無条件停戦までサラミを薄くスライスするように少しずつ交渉を進めて時間を稼ぎ、クルクス戦線やウクライナ東部戦線で陣地を拡大し、ナショナリストらロシア国内の強硬派を宥める条件を整えるつもりなのか。
焦ったゼレンスキー氏が少しでも停戦協定に違反すれば交渉決裂の全責任をウクライナになすりつけ、トランプ氏の怒りをそらすことができる。戦場で優位に立つプーチン氏はしたたかにトランプ氏の忍耐、制裁解除、陣地拡大を天秤にかける。
【木村正人(きむら まさと)】
在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争 「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。