
完全に「雲中雲を見ず」状態に
斎藤も、自身の応援団が詰めかけていることは当然認識していた。本会議や報道陣の囲み取材では憮然として硬かった表情も終了後は一変した。記念撮影や握手に次々と応じ、斎藤支持者の間で有名なYouTuberの慰撫するような質問に答えながら、思わず顔をほころばせた。
ネットからリアルまで幾重にも取り巻く「雲」の中で、自分は確実に支持されている、主張は間違っていないと自信を深めたのだろう。同日午後の定例会見で、斎藤は百条委の結論に真っ向から対立する姿勢を見せた。
百条委報告書を「一つの見解」と矮小化し、パワハラについては「業務上必要な範囲の指導だった。パワハラかどうかは司法の判断」、公益通報についても「県の対応は適切だった」「誹謗中傷性の高い文書という考えは今も変わらない」と従来の主張を繰り返した。公益通報者保護法違反の可能性が指摘されたことに対しては、「逆に言えば適法の可能性もある」と反論した。
さらに踏み込み、一線を越えたのが、元県民局長が「倫理上極めて問題がある、わいせつな文書を作成していた」と言及したことだ。
告発文書の内容とは関係ないばかりか、斎藤自身は「見ていない」にもかかわらず、だ。亡くなった告発者を貶める発言に記者から質問と批判が相次いだが、「倫理上問題があるとはこれまでも述べてきた」「(公表しても)問題はない」と譲らず、元県民局長の公用パソコンに情報公開請求があれば、データ開示を「議論することはあり得る」とまで言った。
自らの瑕疵を認めず、告発者のプライバシーまで利用しようとする。完全に「雲中雲を見ず」に陥っていた。