
非ネイティブ英語は「紋切り型」で「荒っぽい印象」に
──会談を受けて、石破総理は「G7の分断が進まないように日本としてできる限りの努力をしていかねばならない」とどちらの立場にも寄らないコメントをしていた。
長島:非常に有意義なコメントだと思いました。ヨーロッパも中長期的には、どうにかアメリカを巻き込んで停戦に進んでいこうと努力しているわけです。どちらかの側につくと、分断を助長しかねない。日本は少し距離を置いた立場で、両者をつなぎ合わせられる道を模索しながら、動いていくのが賢明です。
──ゼレンスキー大統領の交渉戦略にも問題が?
長島:これは結果論ですが、ゼレンスキーさんが英語で話してしまったことが失敗の原因だったのではないでしょうか。ネイティブ2人(トランプ大統領とバンス副大統領)相手に非ネイティブが英語で論争するのですから、形勢はどうしても不利になる。しかも、非ネイティブの英語はどうしても紋切り型になりがちで、ニュアンスが伝わりにくく、荒っぽい印象になってしまう。
通訳を介せば、ワンクッション置くことにより、頭の中を整理しながら冷静に対応できる。我々も経験がありますが、特に外交交渉の場では大事です。
──トランプ氏対策の難しさも露わになった。それと比べると日本時間2月8日の日米首脳会談は想定外もなく、無難に終わった。
長島:勝因がどこにあるかと問われれば、やはり石破総理ご自身が、無我の境地で、あらゆるものを飲み込み、トランプ大統領と相対したことだと思います。外務省や経産省はもちろん、麻生太郎元総理の「結論から簡潔に話せ」という助言や、ソフトバンクの孫正義社長のアドバイスも大いに参考にされていた。
先に大統領にお会いになった安倍昭恵夫人にも助けていただいた。石破総理ご自身が安倍晋三元総理の外交的功績に触れられたことも非常に大きかったと思います。
──長島補佐官は会談に先立ち、昨年11月に訪米し、トランプ氏側に「石破外交はこれまでの日本外交の延長線上にある」と伝えていた。
長島:外交は継続性が大事です。石破政権の安全保障政策戦略は、安倍・菅・岸田という前任者が積み上げた政策の連続性のもとにあるということを、米政府関係者や、連邦議員関係者、有識者に伝えました。私のミッションは、政策の継続こそが日米双方にプラスだと説明することでした。かなりの程度受け止めてもらえました。