意外と頑丈なネットワーク
スケールフリー性とクラスター性を生態学の観点から考えてみる。
弥生構内の花と昆虫のネットワークにもスケールフリー性やクラスター性が見られることがわかった。花と昆虫の組み合わせとその頻度は偏っていて、一握りの昆虫が多くの花を訪れる一方、多くの昆虫は1種か数種の花を訪れるだけである。
また昆虫たちの花の好みは全体には似ていた。このような構造があると、昆虫が少しくらいいなくなっても別の昆虫が代わりとなって花を訪れ、花粉を運んでくれることが期待できる。
観察されたネットワークから仮想的に昆虫(花)を取り除くことで、どのくらい花(昆虫)が共倒れするかをシミュレーションによって調べることができる。
このシミュレーションでは花粉を運んでくれる昆虫がいなくなると、その花は実をつけることができなくなるので連鎖して絶滅すると仮定する。同様に、花がなくなると昆虫は花の蜜や花粉を得られなくなるので絶滅すると仮定する。
ネットワークから昆虫(花)を1種、2種、3種……とランダムに取り除いたときに、それによって絶滅する花(昆虫)の種数を調べた結果が図である。100回繰り返した平均値をとっている。

これをみるとどちらも上に盛り上がったカーブを描いている。左の図は、昆虫が多少絶滅してもそれによって共倒れして絶滅する花は少ないことを意味している。
右の図は花を取り除いた場合でよく似た形になっている。これはネットワークの中にクラスターが多く存在するので、リンクが冗長になっており、昆虫(花)が絶滅しても、その種とつながっている花(昆虫)が孤立しにくいからである。
しかし、取り除く昆虫や花が半分を超えた辺りから急激に共倒れして絶滅する種が増える。
左右の図を見比べると、昆虫を取り除いていくとき(左)のほうが花を取り除いていくとき(右)よりもカーブが湾曲している。したがって花が絶滅することのほうがネットワークに与える影響は大きく、そのため花の種類を増やすことでネットワークをより頑丈にできるかもしれない。