東京大学構内で見つけた受粉に関わる145種の昆虫たち

 ネットワークの視点から考えることで、人間社会のネットワークにも話を広げられるはずである。XなどのSNSはネットワークの典型的なものであるし、東京の地下鉄の路線図や高速道路もネットワークの一つである。

 2012年の春から秋にかけて東京大学の弥生構内(東京都文京区)で決まったルートを散歩しながら、花に来る昆虫を採集して、どの昆虫がどの花を訪れているのか調べてみた。昼休みに捕虫網を持って東大構内をうろうろしていたのでさぞ怪しまれたことだろう。

ハハコグサの花にきたハナバチの一種(写真:筆者)ハハコグサの花に来たハナバチの一種(写真:筆者)

 5月から10月に花に来た昆虫を採集し、同定すると、1926個体、145種となった。それらの昆虫は59種の植物を訪れていた。昆虫と花の組み合わせを図にすると以下のようになる。

昆虫と花の関係性を線で結んだ図(出典:岸茂樹・長瀬博彦(2015) 東京大学弥生構内の膜翅目有剣類. つねきばち 26:14–30.)昆虫と花の関係性を線で結んだ図(出典:岸茂樹・長瀬博彦(2015) 東京大学弥生構内の膜翅目有剣類. つねきばち 26:14–30.)

 上段が花を訪れる昆虫種を表しており、下段はそれらの昆虫が訪れる花(植物種)を表している。下段の太い黒棒は多くの昆虫が訪れる人気の花で、春のハルジオンや夏のヤブガラシである。

 見ての通り、組み合わせはかなりゴチャゴチャになっている。私は、組み合わせがゴチャゴチャなのが自然で、それぞれの関係が厳密に決まっていないからこそ生物の多様性が維持されると考えている。ただ、ゴチャゴチャなままではこのネットワークを深く理解できない。

 このネットワークを深く理解するために、複雑ネットワークでよく知られている「スケールフリー性」と「クラスター性」を見てみよう。