子どもの年収が「壁」を超えると「扶養控除」が受けられない
まずは、会社員のケースで所得税の計算過程をおさらいしておきましょう。
所得税を計算するときには、税込の年収(税金などが引かれる前の1年間の総支給額)に所得税の税率をかけて税額を求めるわけではありません。
まず、税込の年収から、会社員にとっての必要経費に相当する「給与所得控除」のほか、本人や家族の状況、災害や病気といった個人の事情、保険商品などの契約状況によって税の負担を軽くする「所得控除」を差し引いて「課税所得」を求めます。この課税所得に、所得額に応じた税率を掛けて所得税額を算出します。
その後、住宅ローン控除などの税額控除がある場合は、所得税から直接減税します。
「所得控除」のひとつに、扶養者が受けられる「扶養控除」があります。通常、扶養控除額は所得税で38万円、住民税で33万円なのですが、大学生の年代(19〜23歳未満)の子どもを扶養している場合は「特定扶養控除」といって、所得税で63万円、住民税で45万円の控除を受けられます。
ただし、子どもがパート・アルバイトをして、ある一定の年収を超えると、扶養者は、「特定扶養控除」を受けられなくなります。この金額が昨年まで「103万円」でした。配偶者の税金の壁だった「103万円の壁」とは別に、「もうひとつの103万円の壁」などと言われるものです。

冒頭で書いたとおり、年収の壁は今年から改正される見通しです。昨年12月の税制改正大綱では、扶養者が配偶者控除や扶養控除、特定扶養控除を受けられなくなるボーダーラインが「103万円」から「123万円」に引き上げられる方針でした。それが、冒頭でも示したとおり、123万円に非課税枠が上乗せされ、年収200万円以下の場合は「壁」が160万円になる見込みです。
他方、特定扶養控除の対象となる子どもの年収上限については、103万円から150万円に引き上げられることになっています。
このあたりの改正については正式に国会で承認されるまでは確定的なことは言えなそうです。まずは昨年までの「103万円の壁」時代に大学生の息子さんが年収の壁を超えてしまったYさんの事例を見ていきましょう。