北欧などでは「紙」への回帰が顕著に

酒井:さらに、回答する子どもたちの心理的な効果も考える必要がありますが、その視点も抜け落ちています。

 デジタル教科書についての調査は先行導入する学校を中心に行われていて、先生も新たな取り組みに前向きでしょう。子どもは大人の期待に敏感ですから「デジタル教科書は良いものだ」と答える可能性が高まるのは当然のことです。

「デジタル教科書を活用すると、紙の教科書に比べて理解度が高まる」というデータが欲しいのであれば、「デジタル教科書を導入している学校」に限ることなく、「全く導入していない学校」を含めて複数の学年と教科を相当数集め、一貫性があるか調査すべきです。

デジタルと紙の教材を併用し学ぶ児童(写真:共同通信社)

──デジタル教科書は各国が日本よりも前に導入してきたという事実があります。ところが、デジタル教育先進国のフィンランドやスウェーデンなどでは紙の教科書に回帰する方針を打ち出しています。

酒井:諸外国で「紙の教科書回帰」の動きが顕著になっているのは、デジタルデバイスに依存した学習が危険だということが分かってきたからかもしれません。そうしたリスクについてほとんど議論されない日本の状況は異常です。

──このままデジタル教科書に突き進むと将来、日本人の学力が大きく下がってしまうリスクがあるということですね。