「朝日新聞に対してカウンターを喰らわせるのが花田さんのスタンス」

──花田さん自身は、自分のイデオロギー感覚をどう認識されているのですか?

梶原:「左ではない」と言っています。学生運動にも冷ややかだったようですし、かつて在籍していた文藝春秋も保守的な雑誌で、朝日新聞に対してカウンターを喰らわせるのが、文春時代からの花田さんのスタンスです。

 大きな論調に対して「その見方は違うのではないか」「他の角度から見たらどうだろう」と疑義を呈していくのが雑誌の役割だと花田さんは考えています。左の印象の強かった朝日に対抗する論点を出すと、自然と右翼的な印象に映るのだと思います。

──なぜそこまで、朝日を敵視するスタンスを取ってきたのでしょうか?

梶原:朝日新聞はここ最近部数も減り、論調もかつてほど明確に左がかった内容ではなくなってきました。現在の朝日の国際報道などは、私が見てもほとんど違和感がありません。でも、2015年の慰安婦報道あたりまでの朝日は、戦前のことや自衛隊のこと、対中外交などについて、私などとはだいぶ違う感覚を持ったメディアでした。

 しかも、朝日はインテリの読むクオリティペーパーで、ニュース番組の編集部なども朝日新聞を読みながら扱うテーマを決めていたと言われるくらい、課題設定能力のある新聞でした。だからこそ、花田さんにはそこに書かれていることに関して、あれこれ議論したいという思いがあったのだと思います。

『WiLL』創刊4号目に「朝日新聞特集」をやり、増刷をかけるほど爆発的に売れました。それから、本当に頻繁に朝日新聞特集をやってきました。象徴的だったのは、私が担当していた「築地おどり」という勝谷誠彦さんの連載でした。

「またあいつらこんなこと言ってる」といった感覚で、朝日の夕刊のコラムまで全部読んで、ネタを探して突っつくのです。新聞に掲載された川柳まで「こんな川柳を選ぶ編集部はなんなんだ」と面白おかしく批判する。もう本当にネタは尽きませんでした。

 私自身の感性が変わってきたということもあるのかもしれませんが、今の朝日はだいぶ変わり、もはや以前のように批判すべきところが見当たらなくなってきました。そうすると、鉄板だった朝日新聞特集は組めなくなる。今は部外者なので、今後どうなっていくのかは関心の一つです。

 でも、花田さんには、そういう意識さえ無いのかもしれません。「その月にできる面白いことをやればいい」というスタンスですから。