そこにいくと、『ザ!世界仰天ニュース』は違った。実はこの番組で「池袋通り魔事件」を取り上げた時に、私も制作に携わり、インタビュー出演をしたことがある(私には『池袋通り魔との往復書簡』という著作がある)。スタッフ(制作会社)は企画を立ち上げ、細かく取材をして、再現ドラマ風のVTRを作り、最後にスタジオ収録をする。その内容(ソフト)がメインであるからこそ、問題発覚後も中居の登場シーンを突貫作業でカットすることができた。MC降板も最初に決めている。スタッフの役割も違っている。
女性アナウンサーをスポーツ取材に
さらに踏み込めば、それこそフジテレビは女子アナをタレントのように利用してきた。忌憚なく言えば、女子アナの使い方がうまい。
そもそも、男ばかりだったプロ野球の取材現場に女子アナを最初に投入したのはフジテレビであると、大先輩の記者から聞いたことがある。確かにフジテレビは放送していた専門番組『プロ野球ニュース』のMCに女子アナを起用している。そこからいまでは当たり前のように女子アナもプロ野球選手を取材するようになり、そして女子アナとプロ野球選手の結婚も増えたはずだ。
男中心の現場に女性記者を投入したケースなら他にもある。ある全国紙では司法記者クラブの検察担当に女性記者を当てた。それが功を奏して、やたらにネタを取ってくるようになったとも聞く。
それだけ女性の活躍できる現場が広がったということは、評価に値する。しかし、そこに他の野心はなかったか。
こうしたタレント重視の番組作りや社風といったものが、タレントやプロダクションの接待につながり、やがて女性を〈献上〉するようなところにまでエスカレートしていった可能性も否定できない。
そして、その被害報告をも、タレント偏重主義だけに、限られた幹部にだけしか情報が共有されず、重く口を閉ざす。
かつてテレビ各局は、ジャニーズ事務所の創業者のジャニー喜多川による所属タレントへの性加害について闇に葬ってきた。そして、ジャニーズタレントのスキャンダルをもみ消す現場も私は目にしてきた。そのことは以前に書いた。
【参考】ジャニーズのスキャンダルを「知らぬふり」、私が目撃したTV局の忖度の瞬間(2023年5月21日)
タレントに依存する番組スタイルは、フジテレビだけではなく、他局にもある。だからこそ、この問題はフジテレビだけにとどまらない。
週刊誌報道を見る限り中居は、トラブルに発展しないまでも、こうしたシチュエーションを暗黙のうちに繰り返し楽しんでいたのではないか。バレなければいい、カネで解決したからいい。そうした王様気分にタレントも陥っていく。そうだとしたら、裸の王様にした責任はテレビ局側にもある。
(文中敬称略)