成長を続ける美術館を提案

日本唯一のル・コルビュジエ建築、「国立西洋美術館」も円熟期の名作のひとつだ。1955年から59年にかけて、ル・コルビュジエが日本人の3人の弟子、前川國男、坂倉準三、吉阪隆正とともに建設。建物にはル・コルビュジエが考案した「無限成長美術館」のコンセプトが採用されている。
無限成長美術館とは「展示室を螺旋状の通路でつなぎ、螺旋の渦を外へ外へと大きくすることにより増床が可能になる構造」をもった美術館。つまり展示品が増加し、増築が必要になった場合でも、柔軟に外側へと建物を拡張していけるというわけだ。国立西洋美術館のほかにも、インドのアーメダバード美術館とチャンディガール美術館にも無限成長美術館の構造を見ることができる。
建物を完成形として作り、古くなったら壊して、また一から作り直す。そんなスクラップアンドビルド方式ではなく、1950年代にはすでに建物の永続性や環境への配慮を意識していたル・コルビュジエ。1954年には論考「やがてすべては海へと至る」のなかで、テクノロジーの発達により高度にネットワーク化、グローバル化が進むことを予見。その先見性の高さに驚かされるばかりだ。

1958年、ブリュッセル万博のフィリップス館を手がけたル・コルビュジエは、そこで最新技術を駆使した映像インスタレーション《電子の詩》を公開。本展では当時の作品を調査し再現したものを上映しているが、制作から約70年が経過しているとは信じがたい。音楽、映像、建築など、多彩な要素をミックスさせたマルチメディア芸術の先駆けといえる内容だ。今後さらに年月が流れたとしても、20世紀を代表する革新的建築家は世界を驚かせ続けるのだろう。
*本展は、ル・コルビュジエ財団の協力のもと開催されます
「ル・コルビュジエ―諸芸術の綜合 1930-1965」
会期:開催中~2025年3月23日(日)
会場:パナソニック汐留美術館
開館時間:10:00~18:00(2月7日(金)、3月7日(金)、14日(金)、21日(金)、22日(土)は〜20:00) ※入場は閉場の30分前まで
休館日:水曜日(祝日は開館)
お問い合わせ:050-5541-8600(ハローダイヤル)
*土曜日・日曜日・祝日は日時指定予約(平日は予約不要)