様々な分野を建築につなぐ
さて、パナソニック汐留美術館で開幕した展覧会「ル・コルビュジエ―諸芸術の綜合 1930-1965」。本展はタイトルにもあるように、建築家としても、画家としても成功を収めていた円熟期「1930~1965年」の活動を紹介するものだ。
その円熟期の創作活動を読み解くキーワードが、ル・コルビュジエ自身がスローガンとして掲げた「諸芸術の綜合」という言葉。ル・コルビュジエにとって絵画、素描、彫刻、タペストリー、建築、都市計画はすべて「ひとつの同じ事柄をさまざまな形で創造的に表現したもの」であり、人の全感覚を満たす詩的環境を創出するため、互いに関わりながら集結するものだった。

たとえば、円熟期の代表作として知られ、世界中にたくさんのファンをもつ「ロンシャンの礼拝堂」。ル・コルビュジエ建築では珍しく曲面が多用されているが、それはル・コルビュジエ曰く、「音を発し、聞く形態」を建築的に実現したものなのだという。展示された礼拝堂の写真や模型を見ると、屋根は貝殻のようなフォルムをしていて、そこから祈りの音楽が響いてきそう。
そう思っていると、今度はその屋根の形が耳にも見えてきて、建物自体がその音楽を聴いているような印象も受ける。ル・コルビュジエはこの礼拝堂を建築と音響が深く関わり合った「音響的建築」と称している。