ロシアのバランスシートの決定的な弱点

 ロシア中銀の『年報』より最新2023年のバランスシートの構成を抜粋すると、外貨建て資産(含む貴金属)が資産サイドの8割以上を占める圧倒的な存在であることが分かる(図表2)。

【図表2 ロシア中銀のバランスシート(2023年末、億ルーブル)】

(出所)ロシア中銀(出所)ロシア中銀

 1971年に米国がドルと金の兌換を停止して以降、国際通貨体制は管理相場制度に移行している。現在、少なくとも主要国の中銀は量的緩和政策を行ったこともあり、実質的に「国債本位制(国債の信用力を担保に通貨を発行する体制)」の下で通貨を発行している。

 つまり、主要国の中銀のバランスシートの資産サイドの圧倒的な部分は、自国の国債である。

 例えば、米連銀準備制度理事会(FRB)の場合、2024年末で資産サイドの63%が米国債である。日銀の場合はさらに高い77.8%だ。両国の場合、財務省が外貨準備や金準備を潤沢に保有しており、それが国債の信用力に反映されている側面もあるが、とはいえ基本的には、国債の信用力に担保されて通貨が発行される仕組みである。

 それに比べると、ロシア中銀の場合、外貨建て資産がバランスシートの83%を占めている。言い換えれば、通貨ルーブルの信用力は、中銀が保有する外貨建て資産(外貨準備)に担保されていることになる。実質的に、ロシアは「外貨本位制」と称してもいいだろう。

 同様にトルコも、外貨建て資産が中銀のバランスシートのおおよそ67%を占めている。